第三部
名誉と誇り
にじゅうきゅう
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くせに、私の頭から足先まで、何度も視線を往復させるヴァルクムント。それなりに自覚があるだけに、何とも言えないが。
「貴様が言うことでもないだろう」
「まあよ、俺ぁ巨人の血をひいてるからな。おめぇさんのお仲間は皆そんなにデカイのかい?」
「平均は私の頭一つ分は低いな」
そう言うと、ヴァルクムントは一瞬目を見開いた後、嬉しそうに「そうかいそうかい!」と、高揚に頷く。
まあ、気持ちは分からないでもない。周りよりも体格が良いと、言葉通りに頭一つ分他よりも良くも悪くも目立つのだ。
ヴァルクムントの場合、私よりも、それこそ体一つ分近く違うのだから、その思いもひとしおであったろう。
こう見えて、意外と繊細な心の持ち主だったのだろう。むしろ、幼少期にそういった出来事を経て、いまのヴァルクムントに落ち着いたと言った方が正しいか。
「さて、取り合えずはまぁ、お嬢ちゃんの反応を見れば予想はつくがよ、助けたのはおめぇさんだな?」
取り立てて隠す必要もないので、私は首を縦に振る。
「洞窟の件や、ガミュジュをぶっ倒したってぇのも、おめぇさんで間違いねぇか?」
私は再度、肯定の意を示す。
「んでまぁ、お嬢ちゃんとスタインの餓鬼んちょのとこの騎士隊が遭遇したってぇ混沌獣に関してだが」
「その番は私が狩った」
「番!? こりゃあおでれぇた」
そう言って何が楽しいのか、ヴァルクムントは大きな笑い声を上げる。
「ぅううう……」
その声に当てられたのか、エリステインが両手で顔を挟みながら、頭を振って起き上がってきた。
お寝坊さんめ。
「おうおう、お嬢ちゃん。お目覚めかい」
「あうぅ……。ヴァルクムント様? えっと……はっ!?」
何かを思い出したように振り向いたエリステインは、私を上目使いで睨んでくる。
「なんだ?」
「その反応はおかしくないですか?!」
「ぐはははははは!」
もう一度顔面を鷲掴もうとした私は、今度こそ腹を抱えて笑い出したヴァルクムントに釘付けになる。その一瞬の隙をついて、エリステインは私の手の届かない範囲へと逃れてしまった。
「いやぁ、すまねぇすまねぇ。中々に良いコンビじゃねぇか」
鎧の上か自身の腹を叩きながら、ヴァルクムントは宣った。
「……どうでも良い。それより、私も聞きたいことがある」
「どうでもいい?!」
「あん? なんでぇ?」
「ヴァルクムント様?!」
鈍器は黙ってろ。
「私と同じような者を知っているのか?」
ヴァルクムントは顎を撫でながら、中空へと視線をさ迷わせる。
2人に無視される形となって涙目のエリステインはこの際、徹底的に無視だ。
すると
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