5話
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進めたいんだと思う。でも、僕が泣いたときはすごい
焦って謝ってきたり、慰めてきたから人を傷つけようとするつもりはないんだろう。あの人なりの歓迎だったのかなと思う。
そして、とにかく親しみやすい。
最初こそ突飛だったものの、この人の雰囲気、喋り方、人との距離感、うまい言葉が出てこないが、とにかく人と親しみやすい絶妙な空気がこの人にはある。
「あー、後でシャワーを使う時間帯を決めたり、ベッドの間にカーテンも引かないとダメですね」
カーテンなんて持ってきていたかな僕?
「おねーさんは別に、一緒にシャワーを浴びたり一緒のベッドで寝てもいいのよ?」
とんでもないことをサラッと言うたっちゃん先輩。
「はいはい、分かりましたから後でしっかり決めましょうね」
「むっ」
最初は完全にやられたが、もう簡単にはやられないぞ。
こういう人の冗談は間に受けずにすぐに流すのがベストだ。
「さっきまではおねーさんの胸で泣いていたのに、こんな風になっちゃって」
よよよ、と泣き崩れる振りをするたっちゃん先輩。
「泣いてません!」
泣いてないといったら泣いてないんだ。うん。
くそ、素直に流せばよかった。
「まったく……。よし、荷物はこんなところですかね」
パンパン、と手の埃を払い落とす。
ちょうどたっちゃん先輩もパソコンを組み終えたところだった。
「これで全部かしら?」
「ありがとうございます、たっちゃん先輩。おかげですぐ終わりました」
「いいのよ、同居人なんだから仲良くしましょ」
よし、荷物はこれで全部終わったから次はご飯を食べに行かないと―――。
「ねぇ、鬼一くん」
先ほどよりも声のトーンが僅かに低いたっちゃん先輩に呼ばれる。
「ねぇ、鬼一くん。答えたくなかったらで答えなくていいんだけど」
「なんです?」
そんな前フリをしてまで、一体何を聞くつもりなんだろう?
「ゲームはもうやらないの?」
その言葉は僕を一瞬、止めた。
そう、僕の荷物の中にはゲームやその周辺機器などは一個もなかった。
そのことを疑問に感じたんだろう。
「……そう、ですね。きっと、もう2度とやらないと思います」
たっちゃん先輩の質問は足が動かなくなるほど、僕にとって鋭いものだった。
未練ばっかりだし、散々悩んだけど、僕はもうゲームをするつもりはない。
「キミが私のことを知っていたように、私もキミのことをある程度知っているんだよ。とはいっても突然のことだったからそこまでなんだけど」
そうだよな。護衛対象のことを知らないなんて間抜けな話しもあるまい。
「月夜 鬼一。
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