第三部
名誉と誇り
にじゅうはち
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「おう。こっから先はお前らで行ってこい」
「……は? 隊長はどうなさるおつもりで?」
あまりにも無責任過ぎる物言いに、部下の男は先程まで感じていた畏怖を忘れ、呆けたように問いかけた。
「俺ぁちょっくらやることができた。ここから1時間ほど行ったところで何もなけりゃあ、今日のところはそれでいい。そんぐらいならおめぇにもできるだろ」
肩で偃月刀を弾ませ、悪びれることもなく森の奥を指差して宣うヴァルクムント。
部下の男は、何を言ってもこの男が譲らないのを長い年月から熟知していた。一度大きく疲れたような溜息を吐くと、諦めた顔で大男を見上げる。
「……わかりました。では、戻ったら隊長がしっかり報告して下さいよ。いやですからね、お小言いわれるのは」
「はっ! こちとら命掛けてんだ。小言の1つや2つ、びびってんじゃねぞ」
そう言って、ヴァルクムントは鼻で笑い、なんのことはないと振り払うように腕を振るう。
「そうですか。では、隊長が勝手に単独行動を取ったと、私からヘイムダル様へお伝えしておきます」
「……おい。それとこれとは話がちげーんじゃねぇか?」
「違わないです。何と言っても、私たちも命が掛かってますから。今後のためにも、ですね」
爽やかな笑顔の中に、若干の怒気を孕ませた笑みである。
ヴァルクムントは一度舌打ちをすると、部下の男へ背を向けて1人、隊列から外れて森の奥へと進んでいく。「ったく、なんだってんだ」とぶつくさと文句を言いながらも、考えを改めるようなことはないようだ。
「ちゃんと帰ってきて下さいよ!」
その背に掛けられた部下の言葉に、振り返ることなくヴァルクムントは手を振ることで応えた。
―
「ここに、こんな拓けたところがあるたぁなぁ」
周りは不自然なほどに地面が均されており、半径100メートルほどの円形が出来上がっていた。
偃月刀を肩に担いだ大男、ヴァルクムントは周囲を見渡して言ちると、視線を一点へと固定する。
「なぁ、そうは思わないかい。嬢ちゃん」
上半身は見たこともないデザインの、何かの生物の皮を鞣したタートルネックのノースリーブの肌着と、これまた見たことのない形状の胸当てと肩当てを身に付け、下半身はほとんど太ももが見えているホットパンツに、膝まで隠せる足鎧を装備している女性。
肌に直接着ているのだろう、衣服の体をなしているとは思えない網目上の何かが、露出している肌を申し訳程度に覆っている。
場所が場所であれば、その女性の美しく人好きのする容姿も相まって、男共の視線を釘付けにしただろうことは、想像に難くない。
だが当然、ヴァルクムントにそういった反応は望めない。
ざっと見たところ、武器の類を持ってい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ