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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その1)
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ガス抜きにもなるだろう」
自分で言っていて余りの酷さに思わず苦笑してしまった。ゼークトも同感だったのだろう。同じように苦笑している。
「要塞司令官は、敵が何故攻めてこないと思う?」
「おそらく、こちらをおびき出そうとしている。そんなところではないかな」
「私もそう思う。芸の無いやり方ではあるが、苛立たしいのは事実だな」
ゼークトがうんざりしたように吐き出す。要塞司令官の私が苛つくのだ。攻撃手段のある彼の気持ちは察するに余りある。
「ゼークト提督、気になることが有るのだがな」
「?」
「今回オーディンからは敵の来襲について何の警告も無かったがどういうことだろう?」
私の問いにゼークトの表情が曇る。彼も同じことを考えていたのだろう。これまでは必ずオーディンから警告があったのだ。それが何故ないのか? 要塞攻略となれば大兵力を動員するのだ。フェザーンから帝国に通達があったはずだ……。
「分からん……。もうすぐ司令長官が来るはずだ、あるいは司令長官なら知っているかもしれんが……」
彼の言葉にとんでもない事に気付いた。司令長官がもう直ぐ来る。いかん、その事を忘れていた。
「ゼークト提督、司令長官が敵襲を受ける可能性は無いか?」
慌てて話す私に彼も気付いたようだ。
「なるほど、その可能性があるな。奇襲を受けるのは拙い、連絡を入れておこう。届けばいいが……」
「大丈夫かな。敵は大兵力のはずだが……」
「通信が届けば大丈夫だ。奇襲さえ受けなければ何とかなるだろう」
ゼークトも不安なのだろう、語尾が弱い。
しかし私達の願いは届かなかった。翌帝国暦487年4月24日、遠征軍より通信が途切れ途切れ入る。
「遠征軍は反乱軍の大軍に不意をつかれ現在苦戦中。至急来援を請う!」
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