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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その1)
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つけてでも連れ帰れとメルカッツ提督に言って有ります」
「宇宙艦隊司令長官は、…… 一年、いや半年早かったかもしれんな」
思わず俺は苦笑した。元帥が咎めるような視線を向けてくる。
「……同じ事をリューネブルク中将が言っていました」
「そうか」
今度は元帥が苦笑した。世の中思うようには行かないと言う事だ。
「とにかく一度戦わせるしかないと思います」
「勝敗は関係無くか」
「勝てば落ち着くでしょう、負ければ反省すると思います」
「うむ……止むをえんか」
この話はもうやめよう。犠牲になる兵のことを考えると胸が痛むがこれ以上は此処で話してもどうにもならん。話すほど滅入ってくる。今回はメルカッツ提督に頼むしかない。後はラインハルト自身の問題だ、彼が自分で解決できるかどうか。
「ところで元帥、先日のお願いは如何でしょう?」
「士官学校での講演の件か」
「はい」
「良いだろう。私の経験が若い学生たちの役に立つのであれば」
元帥は珍しく口元を綻ばせて答えた。俺は元帥に士官学校で講演をしてくれるように頼んでいる。指揮官としての心構え、決断の苦しさ等を話してもらえればきっと役に立つだろう。俺自身が今そう感じているのだから。
俺は話を終えるとミュッケンベルガー邸を辞去した。ユスティーナが見送ってくれる。
「提督、もうお話は終わりですの」
「ええ、終わりました」
ユスティーナ、俺が一階級降格処分を受けた時は大変だった。自宅謹慎中の俺の所に来てわんわん泣きながら謝るのだ。ヴァレリーもミュラー達も見ているだけで助けようとしない。本当に酷い奴らだ。あれだけは恨んでいる。
「お忙しいのでしょう。わざわざ来て頂いてご迷惑ではありませんか?」
「とんでもない、元帥閣下には色々と相談に乗ってもらっています」
「また、来ていただけますか? 養父は提督がいらっしゃるのを心待ちにしているようです」
「ええ」
■ 帝国暦487年4月20日 イゼルローン回廊 特設任務部隊ヤン・ウェンリー
「四千光年を二十四日悪くないな」
「フィッシャー准将の艦隊運用は名人芸さ」
「そうだね、ラップ」
ジャン・ロベール・ラップ少佐。士官学校の同期生。ジェシカ・エドワーズの婚約者。信頼できる友人であり、頼りになる参謀だ。彼がこの艦隊に配属されたのは幸運だった。
私が率いる特設任務部隊は三月二十八日に大規模訓練と称し、ハイネセンを発ちイゼルローンとは反対側に向けて三日間ワープを繰り返した。その後イゼルローンに向けて改めて航路を算定しワープを続けイゼルローン回廊に入っている。
司令官:ヤン・ウェンリー少将
副司令官:フィッシャー准将
参謀長:ムライ准将
副参謀長:パトリチェフ大佐
作戦参謀:ラ
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