雨夜-レイニーナイト-part2/悲劇の前夜
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ながらウルトラゼロアイを探した。だが、稽古が本番に向けた本格的な物となる一方で、ゼロアイが見つかることもなかった。
「みんな、舞台の本番までもうすぐね」
もうその日は、本番のほんの数日前の頃だった。
ウェザリーが話している間、サイトは見つからないゼロアイのことを気にしていた。
正直自分でも情けないものだ、と思う。一番盗まれてはならないものを盗まれてしまったのだから。
よりによって……あの人に。
彼女以外に考えられなかった。でも、今でも信じられないという気持ちが強い。少なくともミシェルは、あんなことをするような人じゃないと思っていたのに。ずっと信じていたワルドに裏切られたときのルイズも、こんな気持ちだったのだろうか。
「必ず見つけ出してやる…」
ウルトラゼロアイがあるはずの、空っぽの胸の内ポケットを掴みながら、サイトは固く誓った。
「サイト、あなた聞こえてるの?」
突然名前を呼ばれたサイトは「え?」、と声を漏らして顔を上げた。周囲の視線が彼に集まっている。
「何ボーっとしてるの。最近集中力が欠けてるんじゃないの?言いだしっぺはあんたなんだから」
「ご、ごめん…」
目を吊り上げるルイズに叱られ、サイトはうな垂れる。そうだ、この劇はハルナの鞄をウェザリーから返してもらうために言い始めたのがきっかけだ。スカロンがそれを後押ししてくれたのだから、気を散らすなんてとんでもない。
「ケイン王子役の件なんだけど、サイト。あなた最近集中力に欠けているわね。稽古中の演技でもそれが伺えるわ」
「……」
ウェザリーの突き刺さるような視線にさらされ、サイトは押し黙る。
(ゼロアイがないだけで、こんなに気持ちが乱れるなんて…俺って奴は…)
「…仕方ないわね。サイト以外にもケイン王子役の候補を立てましょう」
「え!?」
みんなが驚く中、それを聞いてサイトもそうだが、特にルイズやハルナがぎょっとする。それは、遠まわしにサイトを王子役から引き摺り下ろすことを検討しているということになる。一度重要な役割を与えられる側としては、このような処置はあまりにも厳しい。
「ま、待ちなさいよ!そんなのいくらなんでも酷すぎるわ!」
「酷い、とは?ミス・ヴァリエール。彼のここしばらくの稽古への意欲がまるで見受けられないわ。事実稽古中の演技でもそれが見受けられる。台詞の棒読み、気が付けばただボーっと突っ立っているだけ…これなら無駄に目立つだけのミスタ・グラモンの方がまだマシよ」
「そこで僕を引き合いに出すのはとにかく、無駄に目立つとはどういう意味だい…」
嫌な意味で引き合いの対象にされたギーシュは、ウェザリーの自分への認識がぞんざいなものとしか思えなかった。
「………」
本来自分たちはここで呑気に舞台などしている場合ではなかった。一方で、主役にも匹敵する役を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ