第一話 運命の薔薇その六
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「今は守りを固めよう」
「そしてです」
「さらに手を打つべきだな」
「大陸のロートリンゲン家もです」
「あの家とだな」
「縁戚を結ぶべきかと」
こう王に提案するのだった。
「やはり」
「あの家とか」
「はい、あの家は旧教の守護者ですが」
「旧教の力は侮れないな」
「我が国は今は新教寄りの政策を行っていますが」
「偏ってはならない」
「はい」
だからこそというのだ。
「旧教のロートリンゲン家とも」
「縁戚の話を進めるか」
「新教の者達が力をつけ過ぎています」
国内の彼等の勢力がというのだ。
「彼等は職人や商人に多いですが」
「商業を担っている故にな」
「はい、力を備えてきています」
「しかしな」
「これ以上力をつけると」
「偏る」
「農民は旧教徒が多いです」
大公は彼等のことも忘れていなかった。
「ですから旧教もです」
「わかっている、ないがしろには出来ない」
「ですから」
「縁戚の話を進めるか」
「そうしましょう」
「わかった、しかしだな」
「あくまで、です」
大公はまた王に言った。
「どちらにも偏らない、だな」
「このことが重要です」
「双方のバランスを取るべきか」
「先王は強引でした」
二人の父である先王のこともだ、大公は言った。
「強引にご自身が首長とされる新教の一派を立ち上げられ」
「旧教と決別されたな」
「確かに旧教の教会の影響は恐ろしいまでで」
「腐敗も酷い」
「力を削ぐ必要はありましたが」
「過ぎたな」
「周辺は旧教の国ばかりです」
彼等のその国のというのだ。
「その状況であの様な政策をされたので」
「対外関係は悪化した」
「戦争が多くなりました」
新教、即ち教会の敵であるから征伐すべきという大義名分を得た周辺各国が攻めてきたのだ、そしてその結果だったのだ。
「守る必要があり」
「国力を消耗した」
「国庫も危機に陥りました」
「だからだな」
「はい、旧教の方もです」
「取り込むべきか」
「今は我々は王が旧教の信者であられ」
父王の政策を受け継がずだ、そうしたのだ。
「新教の信仰を許し優遇しています」
「新教寄りにな」
「しかしです」
「それが偏ってきている」
「これでは新教と旧教の対立が起こります」
国内において、である。
「そしてそこに他国が介入してきます」
「だからこそだな」
「バランスよく、拮抗させましょう」
「旧教の機嫌み取り、か」
「そしてロートリンゲン家の後ろ盾も得ましょう」
「それが第一だな」
王の目がここで光った、そのうえでの言葉だった。
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