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Three Roses
第一話 運命の薔薇その三

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「高貴な薔薇だ」
「跡継ぎ様だからこそ」
「あの方には紫ですか」
「高貴な紫」
「それを差し上げているのですね」
「そうしている、しかし」
 ここでだ、王はその顔を暗くさせてこうも言った。
「娘達は強い身体だが」
「はい、太子は」
「あの方は」
 廷臣達もだ、王と同じ顔になって続いた。
「どうにもです」
「お生まれになられた時から」
「お身体がです」
「お弱いです」
「大丈夫か」
 不安に満ちた顔でだ、王はこうも言った。
「無事に成人してだ」
「そしてお妃を迎えられ」
「そのうえで、ですね」
「お子をもうけられるか」
「そのことが問題ですね」
「子を為すことは難しい」
 王は実感と共にこうしたことも言った。
「后がいて側室達がいても」
「出来ない時は出来ない」
「そう仰るのですね」
「余がそうだ」
 他ならぬ王自身がというのだ。
「そうであるな」
「最初のお妃様には先立たれ」
「次のお妃様にもでしたね」
「そして三番目のお妃様にでしたね」
「ようやくでしたね」
「先にマリーが生まれてな」
 そしてというのだ。
「そしてだ」
「はい、ジョン様がお生まれになりました」
「太子が」
「ようやく」
「しかしその后もだ」
 三番目の后である彼女もというのだ。
「太子が生まれてな」
「その時の産後の日立ちが悪く」
「そして、でした」
「残念ながら」
「無念だ、側室達との間にはマイラがいるが」
 彼女はというと。
「マリーより先に生まれたが」
「側室であられたマリア様も」
「その時にでしたね」
「元々お身体が弱く」
「マイラ様をお生みになられ」
「子を為すのは難しい」
 王は苦い顔でまた言った。
「そしてその母もな」
「お子を生まれても」
「そこでお亡くなりになられることが多いですね」
「神のご加護があれど」
「それでも」
「この世で最も難しいことだ」
 まさにという言葉だった。
「子を為すことはな」
「では太子を」
「何とかお守りして」
「そのうえで」
「王の後にですね」
「王とするのだ、太子は余の唯一の男子だ」
 それ故にというのだ。
「王にしなければならぬ」
「姫様も王になれますが」
 廷臣の一人が言って来た。
「しかしですね」
「この国の王は男子優先だな」
「はい」
「そう決められておる」
 基は慣習法でだ、男は王である方が望ましい。法によってもはっきりと書かれてもいる。
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