暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫†袁紹♂伝
閑話―桂花―
[10/10]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
私では駄目なのですか」

「何を言って――」

「斗詩や猪々子、そして恋が相手であれば麗覇様はこの後……」

「いやいや、誰が相手でも同じはず」

「嘘です!!」

 思いのほか強い言葉に袁紹の目が丸くなる。桂花は罪悪感やら羞恥心から俯いてしまった。

「私に……魅力が無い…………から」

「そんな事は無い」

「では何故、私には手を出して下さらないのです!?」

 桂花の瞳に涙が浮かび、袁紹の決心が揺らぐ。
 だが彼女を思えばこそ、今は手を出すわけにはいかない。

「桂花の身体が心配なのだ」

「わ、私の身体?」

 袁紹の考え、それは疲労困憊な桂花に無理をさせられないというもの。
 特に今日は不味い。朝から昼にかけての政務、五蝶仮面との対決、現場の処理後屋敷に戻って再び政務、その他雑事、そして絵のモデル。
 成り行きとは言え小さな身体でこれだけの事をこなしてきた。疲れが溜まっているはず……
 ましてや桂花は生娘だ。彼女の身体に負担をかける事は一人の紳士として許されない。

「わかってくれ桂花。我はお前を壊したくないのだ」

 負担をかけている張本人が何を言っているのだろうか、自身でさえ嘲笑ものだ。
 しかしこれは偽りなき本心。今の桂花に袁紹の相手は荷が重い。
 あの猪々子や恋でさえ、足腰が立たなくなるほどの絶倫なのだ。
 肉体的にも盛りがつく年齢であり、未だに自分でも制御が効かない。
 このような獣が桂花を求めるなど……。

「――してほしいです」

「……?」

「壊して欲しいです!」

「!?」

「私を労わってくれるのは嬉しいです。でも、私の想いを考えていません!
 このまま燻り続けるくらいなら…………私を壊して下さい」

 前言撤回。袁紹は桂花を抱き締めた。変わり身が早過ぎる、そう思われても仕方が無い。
 だが男は本心を伝え、女はそれに勝る想いを口にした。これ以上の言葉は無粋だろう。
 この期に及んで尚も足踏みするのであれば、以後、男を名乗る事は許されない。
 中の美女もそう言っている。

 羽のように軽い桂花を持ち上げ寝台に移動させる。自分でも驚くほど袁紹は冷静だった。
 恥ずかしがる桂花の心を汲んで明かりを消す。震える彼女を安心させるように撫でる。
 やがて、月明かりに照らされた影は一つに重なり、闇に溶け込んだ。

 
 
 


[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ