閑話―桂花―
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私では駄目なのですか」
「何を言って――」
「斗詩や猪々子、そして恋が相手であれば麗覇様はこの後……」
「いやいや、誰が相手でも同じはず」
「嘘です!!」
思いのほか強い言葉に袁紹の目が丸くなる。桂花は罪悪感やら羞恥心から俯いてしまった。
「私に……魅力が無い…………から」
「そんな事は無い」
「では何故、私には手を出して下さらないのです!?」
桂花の瞳に涙が浮かび、袁紹の決心が揺らぐ。
だが彼女を思えばこそ、今は手を出すわけにはいかない。
「桂花の身体が心配なのだ」
「わ、私の身体?」
袁紹の考え、それは疲労困憊な桂花に無理をさせられないというもの。
特に今日は不味い。朝から昼にかけての政務、五蝶仮面との対決、現場の処理後屋敷に戻って再び政務、その他雑事、そして絵のモデル。
成り行きとは言え小さな身体でこれだけの事をこなしてきた。疲れが溜まっているはず……
ましてや桂花は生娘だ。彼女の身体に負担をかける事は一人の紳士として許されない。
「わかってくれ桂花。我はお前を壊したくないのだ」
負担をかけている張本人が何を言っているのだろうか、自身でさえ嘲笑ものだ。
しかしこれは偽りなき本心。今の桂花に袁紹の相手は荷が重い。
あの猪々子や恋でさえ、足腰が立たなくなるほどの絶倫なのだ。
肉体的にも盛りがつく年齢であり、未だに自分でも制御が効かない。
このような獣が桂花を求めるなど……。
「――してほしいです」
「……?」
「壊して欲しいです!」
「!?」
「私を労わってくれるのは嬉しいです。でも、私の想いを考えていません!
このまま燻り続けるくらいなら…………私を壊して下さい」
前言撤回。袁紹は桂花を抱き締めた。変わり身が早過ぎる、そう思われても仕方が無い。
だが男は本心を伝え、女はそれに勝る想いを口にした。これ以上の言葉は無粋だろう。
この期に及んで尚も足踏みするのであれば、以後、男を名乗る事は許されない。
中の美女もそう言っている。
羽のように軽い桂花を持ち上げ寝台に移動させる。自分でも驚くほど袁紹は冷静だった。
恥ずかしがる桂花の心を汲んで明かりを消す。震える彼女を安心させるように撫でる。
やがて、月明かりに照らされた影は一つに重なり、闇に溶け込んだ。
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