閑話―桂花―
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「く、覚えていろ!」
立場が逆転し旗色の悪くなった華蝶仮面は、皆が硬直している隙に民家の屋根に飛び乗り。悪党のような捨て台詞を残して走り出した。
「あ、待ちなさい! 衛兵!」
屋根伝いに逃げていく彼女を警邏隊の面々に追跡させる。捕縛は難しいだろう。
逃走劇を繰り返している内に隠密の技を会得したようで、今までも逃走を許している。
だが、今回は心強い味方が居た。
「ワン!」
特別捜索隊だ。匂いに敏感な彼らの嗅覚を持ってすれば、メンマ臭い偏食家の捕縛など時間の問題だろう。
「あの、麗覇様。……先程の」
「絵か? 描いても良いのだが、自画像は思いのほか詰まらなくてな」
袁紹が自画像を描いた時を振り返る――……。
何となく絵が描きたい気分になり、政務を抜け出して自室に篭ったが。
いざ自画像を描き出すと物足りない気分に陥った。自分の顔など鏡で見飽きている。
星に譲った絵はラフ画止まりだ。それでも十分完成度が高いのだが――
「そうだ、どうせなら桂花を描かせてくれないか?」
「わ、私をですか」
「うむ、まずはラフ画から――」
「らふ画!?」
「……駄目か?」
残念そうな顔、悲しそうな声。
その言い方は……ずるい。
「………………いえ」
「おお、受けてくれるか! では準備をしたのち取り掛かるぞ、今夜だ!!」
「こ、今夜」
「鉄は熱いうちに打てというだろう、思い立ったが吉事だ!」
「……」
――どうしてこうなった!?
袁紹の自室。そこで彼は、何時ぞやも脳内で叫んだ台詞を繰り返していた。
その目の前には―――桂花の一糸纏わぬ裸身が晒されている。
――落ちつけ、順番に思い出すんだ。
無駄に本格的な器材を用意し待ち受けていた袁紹。少しして桂花を部屋に招き入れた。
その際に、布のような物を持参していたのに疑問を持ったが、特に追及はしなかった。
彼女は寝台に座らせ、絵を描く為に何かポーズをとってくれと頼んだ。
すると、布の擦れる音が聞こえてきて――……、顔を上げた袁紹の目に桂花の裸体が映り現在に至る。
――まるで意味がわからんぞ!
桂花はここまで積極的な女性だっただろうか。いや、彼女は人並みに羞恥心を持っている。
どこぞの娘みたいに、からかう目的で肌を晒す様な事は出来ない。
ではこれは、モデルとしての本懐を果たそうとしているだけなのか?
そもそも何故裸なのだ。たかがラフ画にそこまで気合を―――ラフ画?
ラフ画→らふ画→裸婦画
「!?」
合点が行った袁紹は頭を
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