閑話―桂花―
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にも関わらず桂花に慌てるような様子は無かった。幾度と無く御輿を止めてきたからこそ、その理不尽さと弱点を把握していたから。
「事を始める前にお伝えしたいことが、この文を受け取りください」
「む」
「まて、罠かもしれない。私が受け取ろう」
ブルーは策略を恐れ、イエローの代わりに文を受け取る。
もしも彼に取りに行かせていたら一時的に御輿を降りる事になる、それを危惧したのだ。
ややあって、文がブルーから手渡され――
「!?」
中を検めたイエローが震え出した。
彼の唯なら無い様子にブルーも横から文を覗き込む。
『休暇届』
現在、南皮の政務は桂花と風が大部分を担っている。袁紹は纏められた内容に目を通し判を押すだけだ。二人のおかげで袁紹には自由時間が存在している。こうして馬鹿出来るのも彼女達在ってこそだ。その筆頭である桂花が、政務の八割をこなしている彼女が休暇を取る。
イエローの脳裏には過労死寸前の自分の姿が浮かんでいた。
『お主を既に包囲されている。無駄な抵抗は止めなさーい』
「……」
桂花達の前で御輿は反転。素顔の袁紹が懐から取り出した拡声器を使い、残った華蝶ブルーに投降を呼びかける。
先程見たような光景だ。迷族の形振り構わない保身の行動に白い目が向けられるが――
有無を言わせない佇まいでその場を制した。実に無駄な威光である。
「おのれいえろー! メンマの誓いを忘れたか!!」
「メンマの良さを延々語り続けたあれか? おかげで食傷気味である。
しばらくメンマは見たくない」
馬鹿な……。と唖然とする華蝶ブルーだが、袁紹が顔を顰めるのも無理は無い。
五蝶仮面結成に辺り、呼び出された四人はブルーから“メンマの誓い”に無理矢理付き合わされ。量にして数キロには届くであろうメンマを口に放り込まれている。
大食いな猪々子や恋も一品物を食べ続けるのは苦痛だったはずだ。終始無表情だった……。
そんな過程を経て結成された組織の絆など、脆くて当たり前だ。
「勝負有ったようね華蝶仮面。いえ、星!」
「いや、勝負はここからだ。それから私は趙雲という美女では無い」
此処に及んで尚も正体を隠そうとする華蝶仮面。桂花は無駄な悪足掻きと捉えた。
周りを兵士で囲み、猪々子も御輿も此方の味方、後は星の趣向品であるメンマを引き合いに出して、彼女を大人しくさせるだけ――
そんな勝利を確信した桂花の前で、華蝶仮面は懐から一枚の紙を取り出した。
先程自分が使った手の物だろうか、不審に思うも焦りは無い。この王佐の才に弱点など無いのだ。
「!?」
しかし開かれた紙を見て絶句。そこに書かれて、
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