第百九話
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の様子をにまにまと眺めたリズが、嘆息とともにそう言っていて。確かCDを貸してもらった、リズがイチ推しの歌手の名前は――
「神崎エルザ……だっけか。セブンみたいにゲームとか、やったりしないのか」
「ないわよ。もしやってても、顔も名前も違う訳だしねぇ」
どうやらアカウントを公表してプレイしている有名人など、VRゲームに関して忌避感も多い昨今ではセブンぐらいのものらしく。当然と言えば当然だった。今度リズに何かプレゼントする機会には、神崎エルザ由来のものにするか、既に持っているものと被らないようにしなければ――と思いつつ。
同時に、アカウントを公表してプレイする、セブンの目的のことを思い出しながら。
「コラ」
リズから力のまるでこもっていないチョップが、幾度かクシャクシャと掻いた頭に炸裂すると、そこで俺の思索は中断されると。目の前にはこちらを見上げている、見慣れた彼女の顔があった。
「何悩んでんだか知らないけど、あんたまで暗い顔しないの!」
そこでとびきりの笑顔を見せながら、こちらに指を突きつけてくるリズに、つられてこちらも小さく笑ってしまう。そうやって彼女に倣って、辛気くさい顔にはならないようにしなければ……と、気合いを込めるかのように、一発だけ自らの頬をはたいておく。
「そうだな。ありがとう、リズ」
「うん、いい顔になった。何か奢りなさいよ?」
「前向きに善処する」
……どうやら、いい顔とやらになれたらしい。自分としてはあまり変わっていないように思うのだけれど、目の前にいるリズは満足げな表情を浮かべているのでよしとしよう。ついでに浮遊城に作った出張場についてでも話そうとすると、視界の端に何やら黒い物体が映る。
「ショウキ、リズ」
「……キリト」
「……そんな嫌そうな顔されてもな。ぶらぶら歩いてたけど、ちょうど1パーティー揃ってるし、どっか遊びに行かないか?」
どうやら今は、嫌そうな顔をしていたらしい。今度は多少なりとも自覚がある――などと思いながら、向こう側を歩いていたユウキたちは、それぞれやる気が有り余っているようで。かくいう隣のリズも乗り気だったが、俺はグルグルと周囲を見渡した。
「ルクス、どこ行った?」
「あの子……またキリトがいるからって逃げたんじゃないでしょうね」
「言い方。リズ、言い方」
あの浮遊城での戦いにおいて、ルクスにとって憧れの存在だったキリトは、まだ直接話すことは難しいらしく。顔を合わせると逃げるところから、同じパーティーにいるくらいまでは改善したので、まさか逃げるようなことはないと思うが。
「さっき、メールチェックするって離れたよな」
「……ちょっとそこの人!」
メールチェックに少し離れ
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