第百九話
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そうして頭を下げるテッチに対して、俺たちは何も言うことが出来なかった。会って数ヶ月の自分たちとは違う、ずっと一緒に過ごしてきたのだろう、恐らくはスリーピング・ナイツを代表しての言葉に――俺とアスナは、黙ってお互いの顔を見つめると、どちらからともなく頷いていた。
「分かった。でも何かあったら、相談してくれ」
「……ありがとうございます。わがままなお願いを」
顔を上げたテッチの目線の先には、キリトと話すユウキの姿があった。どうやら最近はスリーピング・ナイツと行動することが多い、アスナについて話しているらしく、何やら共通の話題で盛り上がっているらしく。それを見定めたアスナも、少し頬を朱に染めながら割って入っていく。
「ちょっと! キリトくん、ユウキ!」
「ゲームの中でも……色々大変なんですねぇ」
「……確かに」
……そう呟いて弱々しく笑みを浮かべるテッチの姿が、酷く印象的だった。ただ楽しく遊べればいいものを、どんな人物にも色々な問題が山積みだ。そんなゲームらしからぬ現実に肩を落としていると、そんな肩にポンと優しく手が置かれていた。
「なーに辛気くさい顔してんのよ。せっかくのライブ後にさ」
「リズ、ルクス……」
テッチもまたユウキたちの方に歩いていき、代わりのように二人の少女が姿を現した。どうやら心底『辛気くさい顔』をしていたらしく、リズに背中を叩かれて無理やり笑顔を作っておく。
「ふふ。ライブ、ショウキさんはどうだった?」
「熱気が凄かったな……まるで現実みたいだった」
そんな様子を見ながらクスリと笑っていたルクスに、ライブの感想を正直に伝えていた。あてどなく転移門まで歩きながら、確かにね――とルクスは俺の感想を肯定する。
「私は現実のライブも行ったことがあるけど、同じような熱気を感じたよ」
「もう現実もゲームも同じなのかもしんないわねぇ……なんて、こんなこと言ってると、また学校でカウンセリングね」
ついこの前の正月明けにやった身としては、もうしばらくはカウンセリングを受けたくない身としては、リズの冗談めかした言い分には苦笑しか出ない。そうしていると突如、先程まで聞いていたセブンの歌が、再び空間を支配するように鳴りだした。
「すまない。私のメッセージの着信だ……音量設定間違えてたかな……」
ピクリと止まったメンバーにペコリと謝りながら、ルクスはこちらに背を向けるとメニューを開きだした。ウェーブのかかった銀髪から覗くエルフ耳が赤く染まっていて、今は着信音の設定を直しているのだろうか。
「でもいいわねぇルクス。VRとはいえ、ファンがアイドルに直接会えるんですもの」
さっき言った通り、現実と変わらないなら直接ね――と、そんなルクス
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