3話
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……この時、僕は自分を抑えるので精一杯だった。
―――勝負を侮辱している馬鹿たちに。
―――勝負を軽くしている愚か者たちに。
―――勝負から尊厳を無くす人たちに。
手を握り締め、腹の底から湧き上がる激情を抑えるのに必死だった。
俯いて声を出さない僕に、オルコットさんは何も気づいていないのか続ける。
「このわたくしセシリア・オルコットが『たかがゲーマー』であるあなたに声をかけているのだから返事をするのが礼ではなくって?」
―――――――――
「ふざけるなよあんたら」
教室内に小さかったがはっきりと声が響き渡る。自分でも驚く程低い声が漏れたことに内心困惑。
鬼一の声が教室の喧騒をピタリと沈めた。
周りのクラスメイトやセシリアもあっけにとられたようにしている。
俺の視線の先には、先ほどまで冷静だった鬼一が感情をあらわにしていた。その感情は怒り。
肩は震え、瞳からは光はなくなり、激情渦巻く暗い炎が宿っていた。
傍から見ても鬼一は感情を押し殺しながら、僅かに震える声で周りにつぶやいた。
「男だから? 女だから? 勝負の場に性別なんて関係ない。お前たちの言っていることは真剣勝負に身を焼いている人たちを馬鹿にする行為だ。
ハンデ? ハンデというものは勝負においては相手を貶める行為で自分を誇れなくする行為なんだ。女が勝つ? 土俵が同じなのに絶対なんてものは存在しない。なにも、勝負というものを、なにも理解していないのに勝負に侮辱を、そして軽くするんじゃ、ない!」
話している途中から少しずつ声が大きくなり、最後には大声だった。
きっとそれはプロゲーマーとして生きてきた人間の悲痛な叫びだった。
ゲームはまだ受け入れられていない部分も多い。
昔よりは受け入れられているだろうが、それでも周りでは「たかが遊び」「無意味な行為」「くだらないもの」という声を聞く。
鬼一は当然、ゲームがそう言われていることも知っているはずだ。
鬼一は子供だから大人たちからそう言われることも多かったと思う。
今の声で分かった。鬼一はだからこそゲームに、遊びなんかではなく、誰よりも真摯に1つの勝負として真剣に向き合ってきたんだって。
鬼一の声にみんな圧倒されなにもできないでいる。
鬼一は乱れた呼吸を整えながら話しを続ける。
「なにが、たかがゲームだって? あんたのいう、そのたかがゲームは僕にとってはいつだって戦いで勝負だったし、決して適当なものじゃなかった。
そして僕と同じようにゲームに燃やし尽くすような情熱と、途方もない努力でゲームに尽くす人だってたくさんいる。あんたたちに理解できるか?、
あの世界では性別も年齢も、国籍なんかも関係なく誰もが
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