第十一話 嵐の中でその十一
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「あると全然違うから」
「そうだな、ある程度でも防いでくれるからな」
「今から帰ろう」
「覚悟を決めてな」
二人で話した、そして。
優花はクラスを出る時にだ、一人呟いた。
「いよいよ」
「?何か言ったか?」
龍馬は自分の隣にいる優花の言葉に聞き返した。
「今」
「あっ、何でもないよ」
優花は今は取り繕った。
「別にね」
「そうか」
「うん、とにかくね」
「今から帰ろうな」
「そうしよう」
「万が一に備えて」
ここでだ、龍馬は正面を見て言った。
「海の方は歩くべきじゃないな」
「そっちも警報出てるからね」
波浪警報、そして津波警報である。
「若し波がきてさらわれたらね」
「まずいからな」
「じゃあ海の近くは歩かない」
「その方がいいね」
二人で話してだ、そのうえで下駄箱で靴を履き傘を拡げてだった。
その土砂降りで尚且つ風も強い最悪と言っていい悪天候の中に出た、すると足は忽ちのうちに濡れてしまった。
だが二人はそのまま進む、道は川の様になっている。道行く人々は傘やコートの中で死にそうな顔になっていて車もまるで水の中を進んでいる様だ。
その中を進みつつだ、龍馬は共にいる優花に言った。
「俺に言うことあるんだよな」
「えっ・・・・・・」
「何かあるんだろ?」
傘をさして正面を見つつだ、龍馬は自分の横にいる優花に問うた。
「そうだよな」
「わかってたんだ」
「何となくだけれどな」
勘でというのだ。
「わかってたさ」
「そうだったんだ」
「ああ、それでどうしたんだ?」
優花に顔を向けて問うた。
「一体」
「言おうと思っていたんだ」
優花もこう答えた。
「これからね」
「やっぱりそうだったんだな」
「うん、僕今は男の子だけれど」
優花は正面を見ようとした、だが。
どうしても俯き加減になってだ、龍馬に言った。
「そうじゃなくなるんだ」
「どういうことだよ、それ」
「女の子になろうとしているんだ」
必死に勇気を振り絞ってだ、優花は真実を言った。
「そうなろうとしているんだ」
告白した、ここで。二人の時は完全に止まった。嵐の中もう一つの嵐が吹きはじめた。
第十一話 完
2016・2・28
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