第十一話 嵐の中でその七
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「どうするかの」
「ええ、そうみたいね」
「それじゃあ」
「前を向いてね」
「そうするよ」
優花は口元と目元をほんの少しだけ綻ばせて姉に応えた、そうして。
姉にだ、あらためて言った。
「龍馬にね」
「ええ、信じているからこそ」
「そうするよ」
こう言うのだった、そして。
その話の後でだ、優子は優花にこの話をしたのだった。
「お天気だけれど」
「うん、天気予報見たけれど」
「凄いことになりそうね」
「大雨だね」
「あと風も強くなって」
「大荒れになるんだね」
「そう、なるから」
それで、というのだ。
「登下校の時は気をつけてね」
「そうなるみたいだね」
「海もね」
「うん、津波みたいな」
「そうした荒れ方になるみたいよ」
「龍馬がリュウグウノツカイ見たらしいんだ」
優花はまた龍馬の話をしたが今度は魚のことだった。
「どうやらね」
「ああ、あの深海魚ね」
「あのお魚って出たら海が荒れるっていうね」
「その話は姉さんも聞いたことがあるわ」
優子もとだ、弟に答えた。
「実際にね」
「その話本当だったのね」
「みたいね、ただ」
「ただ?」
「あのお魚ってよくわかってないっていうけれど」
学園内にあるそのリュウグウノツカイの剥製の傍にある説明文のことを思い出しながらだ、優子は弟に答えた。
「色々とね」
「そのこと龍馬も言ってたよ」
「かなり謎の多いお魚なのよ」
「けれど海面に出たら本当に」
「海が荒れるのね」
「そうみたいだね」
「あれなのね」
ふとだ、リュウグウノツカイのこととだ、優花のことも思い出してだった。
そしてだ、優子はこうしたことも言ったのだった。
「人間のわかっていることって僅かなのよ」
「この世の中のことが」
「そう、大海の中の小匙一杯」
「それだけなのね」
「そう、優花のことも」
それもというのだ。
「結局はね」
「知られていないことなんだ」
「人間は何でも知っている様で」
「殆ど知らないんだね」
「そう、そして僅かに知っていることだけで騒いでるのよ」
「そう言われると」
まさにと言うのだった。
「人間って小さいね」
「そうね」
「僕のことも」
「そう、まだ知られていないことになるかしら」
「こうした話って本当にあるんだよね」
「あることにはあるわ、けれど」
それでもと言うのだった。
「ただね、滅多にないことでどうしてそうなるかはわかっていない」
「そうしたことなんだ」
「だから知られていないって言ってもいいかしら」
「そうしたことになるんだ」
「知られていれば」
「僕のことも」
「世の中からも隠すことはなくなるかも知れないわ」
こう言うのだった、弟に。
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