第二十九話 お墓地でその九
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「凄いわね、また」
「よく遊んだんですよね、この街で」
「中学の時から?」
「八木とか桜井とか橿原も好きですけれど」
何処も奈良県の街です。天理教の教会も多い場所です。
「そういった場所よりも天理でしたね」
「また変わってるわね」
これは素直に思いました。
「そんなに遊ぶ場所ないのに」
「歩いてるだけで面白い街じゃないですか」
けれど阿波野君にしてみればそうらしいです。
「ここって」
「確かに何か歩いていても知ってる人に偶然会ったりするのよね」
「それがお引き寄せですね」
「そうなのよ。本当にばったりと会うのよ」
何度それで驚いたことか。世の中というのはわからないものだって思うことがしきりです。何事も親神様のじゆうようじざいの御守護の結果です。
「それが凄いとは思うわね」
「それに結構色々なものがありますよね」
「何だかんだで人が帰って来るから」
おぢばがえりや月次祭やお正月だけじゃなくて。色々な時に人が帰って来てくれる場所です。従ってそれだけ人も多くなります。
「だからね」
「ですよね。色々な場所があるのも」
「阿波野君はどういう場所が好きなの?」
そのことを直接尋ねました。
「一体。どういった場所が?」
「僕は本屋が」
「本好きなの」
「はい。漫画が」
こう来ました。
「漫画大好きですから」
「漫画って。まともな本は読まないの?」
「ラグクラフトとかポーとか小泉八雲とか夢野久作とかでしたら」
「全部怪奇作家じゃない」
思わず突っ込んでしまいました。
「それって」
「魯迅も好きですよ」
「魯迅だってホラーだって聞いたけれど?」
聞いた話では剣を打つ話っていうのがとにかく怖いらしいです。私は阿波野君が今挙げた作家はどれも怖そうなので読んだことはありません。
「怪奇もの好きなの」
「面白いじゃないですか」
あっけらかんとして言います。
「その怖いのが」
「何処がいいのよ」
そんなことを言いながら神殿の北門の階段をあがります。
「怖いのが」
「冬に暖房の側とかでお菓子を食べながら」
「夏じゃないの?」
「夏はスイカを食べながら」
どっちにしろ食べているような。
「春や秋はぽかぽかとした場所だったり涼しい場所で」
「やっぱり読むのね」
「そうなんですよ。もうポーなんてね」
「怖くて夜寝れないらしいけれど」
そこまで怖いと聞いています。
「その人の小説って」
「そうですね。あと雨月物語なんかも」
今度は古典でした。
「現代語訳したもの持ってますよ。読まれます?」
「いいわよ」
はっきりと断りました。断りながら靴を脱いで神殿にあがります。考えてみればここの礼拝場での参拝はあまりしません。朝は東や南なんです。
それで夕方
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