第二十九話 お墓地でその八
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「それがね。やっぱり」
「天理高校にも入りましたしね」
「それを考えたらやっぱりお引き寄せなのかしら」
何かそう思えてきました。こんないい加減で軽い子がどうして天理高校にいるのかしらと不思議で仕方なかったのですけれど。今の阿波野君の言葉を聞くと。
「阿波野君がここにいるのって」
「先輩の側にいられるのは嬉しいですよ」
「それはどうでもいいから」
何かまた変なことを言ってきました。何が言いたいのかさっぱりわかりません。というかやっぱりいい加減な子なんだって再確認しました。
「それはね」
「つれないですよ、それって」
「つれなくてもいいから。とにかくね」
「ええ」
「教祖殿と祖霊殿、行くわよ」
「わかりました。それじゃあ」
「ここからね」
丁度ここで左に入りました。神殿の中庭です。ここも砂利ですけれどそこに入ると本殿も教祖殿も祖霊殿も見えます。三つの殿が全部見えるいい場所です。そこに阿波野君を案内しました。
けれどそこに入ると今はパイプ椅子が置かれています。しかもかなりの数です。阿波野君はそれを見て目を少し丸くさせたうえでまた私に尋ねてきました。
「あれっ、これって」
「明日十八日だからよ」
まずはこう阿波野君に教えました。
「四月十八日ね」
「ああ、そういえば明日ですよね」
「このことも知っていたのね」
「春季大祭ですね」
やっぱり阿波野君は知っていました。パイプ椅子を見ながら納得したような顔で頷いています。
「それですよね」
「そうよ。その日は」
「教祖のお誕生日」
そう、それなのです。この日は教祖がお生まれになったその日なのです。まだ天理高校に入ったばかりなのに本当によく知っています。
「ですよね」
「そうよ。それも勉強したの」
「寛政十年四月十八日」
江戸時代です。
「そうですよね、確か」
「そうよ。その日にお生まれになったのよ」
本当に知っていました。どうやら本当に勉強しています。それが見直したりしたっていうのは言ったら調子に乗るので言いませんけれど。
「それが明日なのよ」
「明日ですか。何か入学してすぐですよね」
「そうよ。本当にすぐだから」
このことも阿波野君に言います。
「驚く子もいるみたいね」
「僕結構驚きましたよ」
驚いている、ではなくです。驚いたっていうのが何か違うような。
「それもかなり」
「過去形じゃない」
「ここに最初に来たのって中学の時なんですよ」
「何年の時?」
「二年の時ですよ。その春に」
「二年っていったら」
私が三年で阿波野君が一年ですから。つまりは。
「私が天理高校に入学した時じゃない」
「そうですよね。丁度天理高校の入学式があったんですかね。その日に黒門見てびっくりしたんですよ。こんなに大きな門が
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