巻ノ四十三 幸村の義その四
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「そして驚くべき話であるが」
「といいますと」
「それは」
「大谷殿は拙者に娘をとな」
「殿の奥方に」
「そうもですか」
「言ってこられた」
このことも話すのだった。
「これまで妻を迎えることはな」
「はい、殿もです」
「やがてはですが」
「しかしこれまでは」
「殿がお若いということもあり」
「そうした話はな」
とてもというのだ。
「考えてこなかったな」
「しかしですな」
「大谷殿からそう申し出てこられた」
「それならばですか」
「殿も」
「考えることとなった、だが」
幸村は家臣達にもだ、このことを話した。
「しかしな」
「はい、そのことはですな」
「武家の婚姻なので」
「当人だけでは決められませぬ」
「やはり何かとです」
「関白様、そして父上とお話をしてな」
そのうえでというのだ。
「決めることとなった」
「やはりそうですか」
「そうなりますな」
「では関白様、大殿とお話をして」
「そのうえで」
「大谷殿の娘御をな」
妻に迎えることになるというのだ。
「大谷殿はかなり乗り気であられるがな」
「ですか、ではそのお話がまとまれば」
「殿も遂にですな」
「奥方を迎える」
「そうなりますか」
「どうも信じられぬがな」
幸村はぽつりと本音も漏らした。
「拙者が女房を迎えるなぞ」
「まあそれはです」
「何時かは必ずですから」
「殿も奥方を迎えられてです」
「家を持たれ」
「そして跡継ぎをもうけられる」
「そうなりますぞ」
十勇士達は幸村に笑って話した。
「ですからこれは刻限です」
「その旬が来たのです」
「なら是非です」
「ご婚礼を」
「関白様と父上のお返事次第じゃな、しかし拙者が妻を迎えると」
幸村は十勇士達も見て言った。
「御主達もとなるな」
「我等もですか」
「女房を迎え」
「そしてですか」
「家を持てと」
「御主達も武士じゃ」
幸村の家臣であるれっきとしたそうした身分であることをだ、幸村は彼等にここであらためて言った。
「だからな」
「家を持つべきですか」
「そう言われますか」
「確かに我等は生きるも死ぬも同じ」
このことは絶対としてもというのだ。
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