巻ノ四十三 幸村の義その二
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「何があっても、しかし」
「間違えれば」
「その時はです」
「大谷殿ではなく」
「義をお選び下さい」
「そうしてもいいのですか」
「そうしてもらいたいのです」
こうしたことを言うのだった。
「お願いします」
「しかしです」
ここでだ、幸村は大谷に返したのだった。
「大谷殿が間違っていなければ」
「その時はですか」
「大谷殿と轡を並べていいですか」
「それがしが間違っていなければ」
「はい、そうして宜しいでしょうか」
「ですか、それがしに義があれば」
大谷は幸村の言葉を受けてだ、まずは。
瞑目してだった、深く考える顔になり。
それからだ、こう彼に言ったのだ。
「ではその時もです」
「大谷殿に義があった時も」
「お願いします」
「大谷殿は間違える方ではありませぬ」
彼のその目を見ての言葉だ、確かに澄んでいてしかもこれ以上はなく強い光を放つ実にいい目をである。
「ですから」
「では真田殿のそのお言葉に応えて」
「そのうえで」
「生きまする」
「そうされますか」
「義を守り」
そしてというのだった。
「そのうえで生きまする」
「間違えることのなきよう」
「真田殿にお応えして」
「そうですか」
「必ず」
こうしたことを話してだった、そのうえで。
大谷もまた茶を飲んだ、無論彼が淹れた茶だ。その茶を飲んでそしてだった、彼に今度はこうしたことを言ったのだった。
「こうして茶を飲んでいますと」
「何かありましたか」
「はい、よく関白様や石田殿と共に飲みますが」
「今もですか」
「特に石田殿とです」
彼と共にというのだ。
「飲んでいますが」
「そのことをですか」
「思います、茶はいいものです」
実にというのだ。
「味もよいですが飲みながら語れます」
「色々なことを」
「だからです」
それ故にというのだ。
「これ以上いいものはありませぬ」
「そこまでお好きなのですな」
「実に」
非常にというのだ。
「茶とその場も」
「その両方を」
「好きなのです」
「そうですか」
「ですからまたです」
「こうしてですな」
「共に飲みましょう」
「是非共」
こうしたことを話してだった、そのうえでだった。
二人は茶も楽しんだ、その茶が終わってだった。
幸村は大谷と共に茶室を出た、すると。
笑顔でだ、十勇士達が二人を出迎えて言って来た。
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