巻ノ四十三 幸村の義その一
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巻ノ四十三 幸村の義
大谷は幸村に語った、彼のその義を。
「真田殿の義を言葉一つの義と言いましたが」
「仁義や信義、忠義ではなく」
「そうです、真田殿はそうした義を全て含めた大きなものとしてです」
「義をですか」
「持っておられると思います」
「ではその義はどういったものか」
「人かと」
幸村のその目を見ての言葉だった。
「人としてのあり方です」
「それがそれがしの義ですか」
「そう思いまする」
「それがしは四書五経も読み」
儒学にあるそれをだ、幸村はこうした書や老荘、法家の書等学問の書も広く深く読んでいるのである。これも彼の強みである。
「義を考えていましたが」
「その義がです」
「人としてのですか」
「あり方だと思います」
「間違ったことはです」
「簡単に言えばそうなります」
幸村を見続けながら言う。
「それがしの思うところですが」
「そうですか」
「真田殿の義は人としてのあり方なのです」
「それを貫く」
「それがあるべきお姿でありです」
「それがしの歩くべき道ですか」
「そう思いまする」
まさにというのだ。
「それがしは」
「そうですか、それがしの義は一文字で」
「人としてのあり方です」
「儒学の教え全てですか」
「儒学で言うとそうなります」
また答えた大谷だった。
「儒学は人のあり方を説いていますが」
「その人のあり方がそれがしの義」
「非常に大きなものです」
「それがしはその義に生きる者」
「ですからそれがしと絆が出来てもです」
それでもというのだ。
「その義を守られて」
「大谷殿をですか」
「それがしのことはお考えなきよう」
こうも言うのだった。
「義のことをお考え下さい」
「それでもいいのですか」
「それがしが義に逆らっていればです」
「その時は」
「義をお選び下され」
是非にという言葉だった。
「それがしを選ばずに」
「大谷殿と絆が出来ても」
「絆よりもです」
「義はですか」
「大事なので」
だからだというのだ。
「それはです」
「それがしに従わずに」
「そうです、お守り下され」
「義を」
「それがし間違うつもりはありませぬが」
大谷もこう考えてはいる、人してだ。
「人のあるべき姿は」
「忠義、信義、仁義は」
「この三つの為にです」
生きているからこそというのだ。
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