第1話、式典
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居並ぶ貴族達が敵意と嫉妬、憎悪の入り混じった視線を一人の青年に浴びせていた。
時々「金髪の孺子」と小声で罵る者まで居る。
もちろん俺は聴かなかったことにする。金髪の青年・・・ラインハルト・フォン・ローエングラムの顔をつぶらな瞳で見つめて、暴言犯に間違われないようにしっかりと口を閉じておく。
幸いにして彼は貴族の挑発に全く反応していない。
ひょっとしたら小さな声過ぎて、罵倒が聞こなかったのかもしれない。無用な軋轢を避けるためにもそうであることを祈ろう・・・
と思ったら同じようなことを考えた貴族がいたらしい。もっとも俺と違って軋轢大歓迎のようで、その貴族の罵声が少し大きくなっている。
だがラインハルトは涼しい顔を浮かべて貴族達の前を通り過ぎていく。
それに不満を感じた門閥貴族の一部が高貴な歯で軋む音を奏でて、彼に対する怒りの深さを露にした。
これまでも門閥貴族は皇帝の寵姫の弟に礼儀を教えようと何年も努力してきた。中には直接命を奪って無礼を働けないようにしてやろうと画策した者まで居が結局皇帝の寵姫の弟・・・ラインハルトは己の才覚と愛と友情、そして皇帝の消極的な庇護で生き残った。
そして、名門ローエングラム伯爵家の門地を引き継ぎ、ついには銀河帝国軍元帥の地位に昇ろうとしている。
門閥貴族の妨害工作はむしろラインハルトの昇進の速度を上げることに協力したようなものだ。
まして今回は二倍の敵を完膚なきまでに撃破した武勲まで進呈した。 いかに強大な政治力を擁する門閥貴族でも、歴史的大戦果を無かったことには出来ない。
一方、ラインハルトは銀河帝国皇帝の玉座に近づくと、嫌みなくらい完璧な所作で皇帝の前にひざまづいた。履いている軍靴にさえオーラを感じてしまう。
『・・・あの軍靴を舐めたら許してくれるかな?』
ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将の靴を見て、俺は土下座しながら靴を舐める自分の姿を想像した。
よもや門閥貴族の重鎮たるブラウンシュヴァイク公オットーが、靴を舐めてでもラインハルトに許して貰いたがっているなど、この場に居る貴族達には想像出来ないことだろう。
無論、俺とてラインハルトが中将くらいの階級なら全力で戦いを挑んで叩きつぶしてやった。ブラウンシュヴァイク家の力を持ってすればいくらでも暗殺者を用意できたのである。
まして赤ちゃんの頃のラインハルトなら雄々しく一対一で戦っても良い。だが悲しいかな、現実に俺がブラウンシュヴァイク公爵オットーになった時には、ローエングラム上級大将は同盟軍三個艦隊を敵に回して大勝利していた。
そう。もう間もなく宇宙艦隊副司令長官様が誕生して、有能な艦隊司令官を集めた元帥府が開かれるというわけだ。
それで平和的な解決を検討しているわけだが、考えれば考えるほ
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