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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十四話 出征前
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「?」
「さぞ、御不快で有りましょう、司令長官も私も提督よりはるかに経験も無ければ歳も若い」
一瞬、自分の心を読まれたのかと思った。副司令長官の顔を見たが先程までの微笑みは無い。穏やかで誠実そうな、それでいて幾分緊張した表情がある。
「各艦隊司令官も皆若い指揮官になりました。能力については心配していませんが血気に逸る事が無いとも言えません。本来なら私がそれを抑えなければならないのですが国内に不安がある今、私は戦場に出る事が出来そうにありません」
「……」
「メルカッツ提督。皆が誤った道に進もうとしたなら提督の力で止めていただきたいのです。難しいことだとは判っています。しかし他に頼める方がいません。どうかお願いします」
驚いたことに副司令長官は頭を深く下げてきた。私はどうしていいか分らず、思わず左右を見た。部屋の女性下士官も驚いた眼で見ている。偶然私と目が合うと慌てて書類を見始めた。
「副司令長官、頭を上げてください……。閣下の仰る事は良くわかりました。小官に何処まで出来るかわかりませんが、微力を尽くしましょう」
「有難うございます。メルカッツ提督」
メルカッツ提督の言葉に嘘は無い。言葉に出した以上、提督は誠心誠意務めるだろう。副司令長官もそれが分るのだろう。表情から緊張が消え安堵の表情が見える。新司令長官、ローエングラム伯に会えないのが気になるが、少なくとも居心地の悪い場所ではないようだ。
■ 帝国暦487年2月25日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
メルカッツ提督が宇宙艦隊に入ってくれた。あの人の事だ、しっかりと押さえ役になってくれるだろう。残念だったのは副司令長官職を用意できなかった事だ。ラインハルトに頼んだんだが、余りいい顔をしなかった。
エーレンベルクもシュタインホフも統括する指揮官が多すぎるのは良くないと言っていた。一理有るのは確かだ。まあ目的はあの人を副司令長官にすることじゃない、押さえ役として宇宙艦隊に参加してもらう事だ。最低限の成果は得た。そう考える事にしよう。
俺の方も徐々に体制が整ってきた。各艦隊の補給、訓練、その他諸々の書類が俺宛に来るのだが到底裁ききれない。ラインハルトは今は出兵の事で手一杯だ。 “それは卿に任せた” だからな。
そんなわけで宇宙艦隊司令部の女性下士官を二十名ほど副司令長官直属の部下にした。それと兵站統括部から十名、女性下士官を派遣してもらっている。その他に彼女たちを管理する役として、リッチェル准将、グスマン大佐を引っ張ってきた。
各艦隊からまわってきた書類を女性下士官たちが確認する。それをリッチェル、グスマンが確認し、俺が再度確認した上で決裁する。まあ、ものによってはリッチェル、グスマンの決裁で問題な
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