1話
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たが、途中からどうでも良くなり足早に教室を目指した。
かなりの余裕を持って出発したにもかかわらず、教室に到着したのはHR開始の10分前だった。
1人で動き回って迷子になるのもマズイので生徒たちの流れに乗っかって歩いていたのだが、初めて見る色んな物に色々目移りしてしまっていた。
結果、間抜けな話ではあるが気づいた時には周りには誰もおらず、迷子になったと気づいた僕は近くにいた清掃員のお爺さんに道を聞いてなんとか到着した。
自分の迂闊さと無駄な疲労に頭痛を感じる。
―――……帰りたい。今すぐゲーセンに帰って全力で対戦したい。
まだ何も始まっていないのにも関わらず、僕は現実逃避を始めるほどに疲れていた。
教室に入るとまた複数の視線が飛んでくるが、多少慣れたのかそこまで気にならない。
視線を巡らせると僕と同じ動物園のパンダを見つけたので近づく。
「どうも初めまして、1人目の男性操縦者さん。僕は2人目の男性操縦者の月夜 鬼一(つきよの きいち)です。これからよろしくお願いします」
ニュースや新聞で何度も見たことのある顔色の悪い年上の男性に自己紹介をし、手袋を外して右手を差し出す。
視線を下に向けていた彼は顔を起こして、僕の顔を見ると弾けたように席から立ち上がり、右手を力強く握った。
「あ、あぁ! こちらこそよろしく頼む、俺は織斑 一夏だ! 一夏って呼んでくれ。そっちはえーと、なんて呼べばいいんだ?」
自分の仲間がいたのが嬉しかったのか、顔色は回復し声も明るい。
「じゃあ僕の方が年下ですし、一夏さんと呼ばせていただきます。僕のことはお好きなようにどうぞ」
「なら鬼一で呼ばせてもらうよ」
よほどこの空間に精神を削られていたのか、こんな単純なやりとりにも楽しそうに返す。
それも当然。僕だって動物園の珍獣のような扱いだったのだから、気持ちは痛いほどわかる。いや、僕の方が扱い的には悪かったか。
「なぁ、鬼一って、あの月夜 鬼一で、いいんだよな?」
「こんな珍しい名前が他にもいるなら逆に紹介して欲しいくらいですけど、僕はアークキャッツ所属の元プロゲーマーの月夜 鬼一です」
「すげぇ! 俺、国別対抗戦とか、あのワールドリーグ決勝戦をネットで見てたんだよ。本当に胸が熱くなったよ! めちゃくちゃカッコよかった!」
かれこれ約3年プロゲーマーだったが、自分を知ってくれている人がいるのは嬉しいことだ。
興奮しているのか、身振り手振りでその凄さを少しでも表現しようとする一夏さん。
良かった。自分のプレイで人を熱くさせることが出来たのであればプロゲーマー冥利に尽きる。それだけでも身体を張った甲斐があるな。
っと、自分が興奮していることに
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