第25話 湯ぶねの2人
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真夜中。
士郎は諸事情により、こんな時間ににまで遅れて温泉に浸かっていた。
「ふーー。たまにはこんな夜遅くに入るのも悪くないな・・・」
時間も時間なので、士郎が言葉を噤むと浴場の設備の音以外聞こえない静かな世界が広がっていた。
そこで士郎はふと気づく。
「・・・・・・浴槽が広がったか?」
そんな事は本来あり得ないので、士郎は熱に当てられた気のせいと判断した。
しかしながら気のせいでは無く、この温泉の露天風呂はこの時間帯になると混浴時間となる為、男湯と女湯を隔てる敷居どころか浴槽自体もつながる設備になっていた。
士郎達が泊まっている最高級のスイートルームでは、その手の説明が無かったので士郎は知らなかった。これは従業員のミスでは無く、このホテルがオープンしてから士郎達の泊まっている部屋クラスに泊まる今迄の御客たちの誰も、客層を選ばないその温泉を使う者が皆無だったからだ。
しかしそれだけなら気配で探ればいいのだが、士郎は今1人なので、念のために昨日初めて使用した雷画から譲り受けた結界を張れる道具を、残してきた冬馬達の部屋の警備で使っているので、今の士郎の気配探知の効果範囲は著しく低くなり限定されている。
それ故に士郎は気付けなかった。
女湯の方から誰かが入ってきた事に。
−Interlude−
百代は既に今夜の分は一度入っているのだが、明日でこの小旅行も終わりと言う事で、誰も誘わず1人で温泉に入りに来ていた。
もう一つ理由を上げるなら、今の自分の気の昂ぶりを鎮める為でもある。
まだ解決と言うワケでは無いが、百代の心配の種の一つだった一子のこれからの事だ。
これについては士郎に相談して、いい方向に行く感じだった。
そしてもう一つこそが本命。
これから平日は条件を熟せば、士郎との組手稽古が約束されている。
真剣勝負とはいかないまでも、強者との戦いを望む彼女からすれば、加減をしても一撃で終わってしまう真剣勝負よりは遥かに期待が強かった。
そんな夢にまで見た至福の時が間近に迫っている。
これで興奮しない方がおかしいだろうと、彼女は思っていた。
しかしそんな昂ぶりが睡眠欲求の妨げになり、それを鎮めるために来ているのだ。
「ハァ〜〜〜」
湯ぶねの暖かさと静かな世界が彼女の興奮を鎮める。
興奮は静まったが、良い気分になって来たので本当はいけないのだがバタ足をしない前提での泳ぎをしてみる事にした。
「ん〜〜〜って?」
「ん?」
百代が背泳ぎで泳いだ先で自分の頭が士郎の背中に当たり、士郎は士郎で背後から何かに当たったので振り返る。
『・・・・・・・・・』
百代が士郎を見上げ、士郎は百代と視線が重なる。
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