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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十三話 イゼルローン
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期かな、ゼークト提督?」
「そうだな。今度、司令長官が出征するだろう。その時さりげなく言ってみるか?」
「そうだな、それが良いだろう」
私たちは顔を見合わせ頷いた。ここを凌ぎきればオーディンへ戻れる。昇進すれば、地位もそれなりに上がるだろう。軍務次官、統帥本部次長、幕僚総監、そのあたりか。願わくばそれまで何事も無く過ごしたいものだ……。
■ 帝国暦487年2月15日 フェザーン ニコラス・ボルテック
「自治領主閣下、自由惑星同盟が軍事行動を起そうとしているようです」
「ほう、懲りぬ事だな」
ルビンスキーの低い声には嘲笑の響きがある。俺はこの男の嘲笑が好きではない。何処か自分が笑われているような気がするのだ。
「なんでも、イゼルローン要塞攻略を考えているようで」
「イゼルローン要塞か、帝国軍が再編成中に落とそうというわけか。しかし、そう簡単に落ちるかな」
嘲笑は消えていない。しかし次の言葉を聞いても変わらずにいられるかな?
「動かすのは半個艦隊、指揮官はヤン・ウェンリー少将です」
「半個艦隊! ヤン・ウェンリー少将か……」
食いついたな、ルビンスキー。俺は出来るだけ神妙そうな表情を浮かべ言葉を続ける。
「まだ確定ではありません。シトレ元帥が動いているようですが、何分半個艦隊でイゼルローンを落とそうと言うのです。反対が強くなかなか難しいようです」
「……ボルテック、同盟に教えてやれ。ローエングラム伯が出征準備を整えていると」
ルビンスキーの声から嘲笑が消えた。
「では、帝国にも教えますか?」
「その必要は無い」
「やはり、要塞は落ちないとお考えで」
そうだろうな。あの要塞を半個艦隊で落とすなど無理だ。
「どうかな。シトレ本部長が何の成算も無しにティアマトの英雄に無茶をさせると思うか?」
「では落とせると」
「見てみたいものだな、あの要塞が落ちるところを。ティアマトの英雄、再びか……」
ルビンスキーは楽しそうに話す。落とせるのだろうか、イゼルローン要塞を……。
「イゼルローン要塞が落ちれば同盟も一息つけます。それをお望みで?」
「それだけではない。イゼルローン要塞を失い、国内は内乱の危機にある。帝国は混乱するはずだ」
「内乱の最中、同盟に攻め込まれれば帝国は滅びかねませんが」
俺は戦慄を覚えつつ問いかける。これまで優勢にあった帝国が滅ぶ?
「そう同盟に都合よく行くかな。帝国にはあの男が居るぞ」
楽しげに話すルビンスキーに反発を覚えながらも“あの男”のことを考える。
「ヴァレンシュタイン大将でしょうか?」
「ヤン・ウェンリーが英雄ならエーリッヒ・ヴァレンシュタインも英雄だろう」
確かに二人とも英雄と言っていい。
「英雄とは不可能を可能にする漢た
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