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魔界転生(幕末編)
第54話 天草四朗という者
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だ。もともと、島原周辺は有馬氏の前は小西行長様が統治していた場所だ。そして、その小西様もまたキリシタン大名の一人だ。ということは、いかに島原がキリスト教に深くかかわっているのかわかるだろう」
 龍馬は良順の言っていることに腕を組み頷いていた。
「そして、この森宗意軒という人物は小西氏に仕えしものなんだよ。小西氏は関が原で敗れ、切腹という事態にはなったが、森は生き残り、諸外国を回ったらしい。そして、有馬氏に仕え、有馬氏が転封したのち、再び姿を消した。おそらく、その死人の生き返りの術は森が開発したものだろう。いまだに、私は信じてはいないがね」
 良順は鼻で笑った。
「では、天草は森と近衛卿に利用されたということかの?先生は、天草なら、死人を生き返られるやもというたぜよ」
「確かに言った。それはな、坂本君、天草には妙なような伝説があるんだよ」
 良順はにこりと微笑んだ。
「ポルトガル宣教師が自国に帰る前にゼウス、つまり、キリスト教の神が島原に転生するという言い伝えがあってな。それが、天草四朗だというんだから、驚きじゃないか。それに、四朗は死にかけた動物や病に伏していた子供を手をかざしただけで直してしまい、鳥は囀り、病院は歓喜の声をあげたというんだから、伝説にもなろう」
「なるほど、先生が言ったことがわかる気がするぜよ。いわば、そういう術ができるなら、死人さえ蘇らせることができるといいことですろ?」
 龍馬は頷きながらいった。
 「その通りだよ、坂本君。だが、それはあくまでも伝説であって本当かどうかはわからない。しかし、近衛卿と森は、それを利用して幕府転覆を狙った。公家も森も徳川に恨みがあったからな」
「しかし、先生。天草が再び徳川転覆を狙ったとしても、もはや徳川は沈んちゅう。本末転倒じゃなかろうが?」
 龍馬は首をひねった。
「さてな、私は天草四朗をみているわけではないんだが、なんとも言えないな。ところで、坂本君。君はここに何をしにきたのかね?私の講釈を聞きに来たわけだけはあるまいに」
 良順は声を上げて笑った。
「あぁ、そのことなんですが、この娘をここに連れて行けっていう命を受けて来たんですが、ここには誰がいるんぜよ?」
 龍馬は後ろに控えている娘を指さし答えた。
「坂本君、君、ここに誰がいるか本当にしらんのかね?」
 良順は勝の使いと言っていた龍馬を疑いの目で見つめた。
「え、ええ、まぁ」
 龍馬は困ったように後頭部を掻いた。
「ここには、新選組の沖田総司君が療養している」
(なるほど、そういうことか)
 龍馬は、良順の言葉に少し驚いたが、すぐににやりと微笑んだ。そして、その時、沖田の名前を聞いた時、今まで反応がなかった娘がぴくりと動いたのを龍馬は見逃さなかった。
「先生。先生はその術がみたいといいましたろ?」

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