第二十一話 匂い
[9/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
意を唱えるとリュウヤは愉快そうに笑った。
「アッハッハ、仲のよろしいこって。ほんじゃ、あとは若いもんでお楽しみくだされ。
あ、そうだキリト。かわいいことふたりだからって、ハメはずしすぎんなよ?」
「するかそんなこと! 怒るぞほんとに!」
「あなた………そういう目的だったの……?」
「ち、違っ………! おいリュウヤ。誤解させるようなこと言うなよ!」
「若気の至りってのは今だから許されるんだぜ」
「サムズアップしながら言うことじゃないわ! アスナも間に受けないでくれよ、頼むから!」
アスナがドン引きしているのをキリトは慌てながら訂正している。それがコミカルチックでなんとも周りの笑みを誘う光景だった。
いつの間にか懐疑の視線は生暖かい目線に変わり、ところどころで笑い声さえ上がっていた。
リュウヤも笑いながら、そろそろお暇しようとし始めていた。
そして身振り手振りで誤解を解こうとするキリトへ近寄り、すれ違いざま。
「分かってるよな、キリトくん」
キリトの横を通り、ふたりを振り返りもせず人混みをかき分けて、リュウヤは「またな」という意思を込めて手だけを振って去っていった。
「あ、リュウヤ行っちゃった。………? どうしたの、キリトくん」
ピタリと止まった身振り手振りに違和感を感じたアスナだったが、キリトは何事もなかったように笑みを作った。
「なんでもない。それよりさっきのは誤解で……」
「分かってるってば。そんな度胸あなたにはないでしょう?」
「うぐっ。それフォローになってないような……」
そんな会話をしながら、ふたりは店へと入っていく。
リュウヤとすれ違いざま、キリトの肩が一瞬跳ねたのを、アスナが気づくこともなく。
「これはいったいどういうことなんだ………」
「わからないわ。犯人も動機も手段も、何ひとつ見当がつかないなんて………」
キリトとアスナの口から重苦しい声が吐き出される。
さびれた教会の二階にある一室で、二人の攻略組が頭をひねっても出てこない難題がそこにあった。
もうすぐ日が暮れようとする夕刻、かすかな陽の光に照らされる部屋。広がる闇は、今まさに起きた出来事を暗喩しているようにも思われた。
キリトとアスナはリュウヤと別れたあと、レストランに入って約束通り食事をすることになった。
周囲からの刺さる視線に圧されつつ、それでも談笑しながら注文したうちのひとつであるサラダを食べていた。
そして二人が同時に吹き出した次の瞬間、外から悲鳴が聞こえてきた。
慌てて発生源へと向かうと、そこには首を縄で縛られ鎧の男が二階の窓から宙吊りにされていたのだ。
それだけでなく、その
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ