第二十一話 匂い
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えかねたものであり、奥底に封印したものへ宛てたものなのだと。
彼の言葉はそれに対するあてつけであり、攻撃であり、侵入する毒でもあったのだ。
だからキリトはおさえたのだ。
沸き立つ感情を抑えて、
震える右手を押さえる。
感情に我を忘れてしまわないように、右手が剣の柄を握らないようにーーー愛剣の切っ先が彼の背中へ向けられないように。
キリトは噴火寸前の衝動を奥歯で噛み殺しながら、しばし時を過ごした。
「こういう時ってさ、普通時間またぐじゃん?『彼はそう言って姿を消した……』とかさ。もっとこう、数日かそれ以上会わないじゃん。
なのになにこれ。なにこの仕打ち。ちょっと意味深なこと言って去ろうとした俺のカッコよさは何処に行ってしまったの?
そやってカッコつけて、「フッ、決まった」とかドヤ顔して帰った俺の気持ちが分かる?」
「こういう場合はさ、心の整理とか必要なんだよ。散々揺さぶってからかって、挙句に痛いところ突かれてさ。アスナが起きてから、少しはリフレッシュできるかなって思ってたおれの気持ちが分かるか?」
「「…………………ハァ」」
男二人。青年と少年の重い重いため息と、
「??? な、なんの話……?」
少女ひとりの困惑でできあがった空間は、なんとも周りの疑問の視線を集めるものであった。
第五十七層主街区《マーテン》
その一角にあるNPCレストランの前で異様というか、異常というか。とにかく形容しがたい光景があった。
少女ーーー《血盟騎士団》副団長アスナ。
大ギルドの一角の副長にして《閃光》と謳われた剣技による知名度もそうだが、彼女の容姿端麗な美貌だけでも周りの目を惹く。
だというのに、そのとなりを愉快そうに歩いていたのが。
少年ーーー《黒の剣士》キリト。
攻略組きってのソロプレイヤー。
浸透度こそ低いが、二つ名を冠されるだけあり攻略組の中でも抜きん出た実力の持ち主だ。
だが《ビーター》とも揶揄され、信頼より不評を買われやすい。
その二人が、まるで対極に位置する優等生と問題児が並んで歩いていたのだ。そりゃあ誰でも奇異の視線を送る。
これだけにとどまらず。さらに、さらにだ。
二人の行く先に立っていたのはキリト、アスナと同じ攻略組のプレイヤー。
青年ーーーリュウヤ。
数々のうわさと都市伝説を抱え、攻略組であるのかさえ怪しいナゾの存在。いったいいつからいたのか。神出鬼没な彼はその存在さえ疑われ、攻略組でもソロプレイヤー内でも浮いた人となっている。
上層、すなわち最前線から来たものならいざ知らず。はたから見れば、有名人とその隣を歩く見たことあるような男が、誰だアイツ的な人物に絡まれている構図で
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