第二十一話 匂い
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そうリュウヤが言った途端、
グギュルルル〜〜〜。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………なにか言うことは?」
「食べ物を分けてください」
「はいはい、素直な子は良い子ですねっと」
腹の減りすぎで顔が悲惨なことになっているキリトをできるだけ見ないようにしながら、リュウヤはウィンドウを操作し始めた。
言わなくてもわかると思うが、リュウヤが視線を逸らしているのは直視すると爆笑しそうだからである。
リュウヤのウィンドウを操作する指が若干震え気味なのがなによりの証左だ。
「お、あったあった。これなんかどうよ」
シュン、という効果音とともに現れたのは、サンドイッチ(のようなもの)だった。
「そこらのNPC店でてきとうに買ったやつだから味の保証はねえけど、いるか?」
「………!」
ぶんぶん、と首を縦に振りながらキリトは目を輝かせてこちらを、正確にはサンドイッチ(のようなもの)を見ていた。
(これでしっぽと耳があったら完全に犬だな)
うっかりすると犬の耳としっぽをはやしたキリトを幻視してしまいそうになるくらい、今のキリトの所作は犬っぽかった。
そんなに腹が減ってたのか、と苦笑しつつサンドイッチ(のようなもの)を手渡そうとして、
「………」
「………?」
「………やっぱやらねえ」
パクッと、リュウヤは自分の口の中に入れた。
「ああぁっ!」
モグモグ、モグモグモグ。
「お、割とうまいんだなこれ。今度も買ってこよ」
「あ、あああぁぁぁぁ………」
キリトの落胆する声が徐々にしぼんでいく。かすかな抵抗としてリュウヤからサンドイッチを取ろうとした右手が未だ突き出されているが、それもすぐに力を失って地に着いた。
モグモグ、ごっくん。
「ああ美味しかった。キリト、欲しかったら店の名前と場所教えてやろうか?」
「一応聞いとく……。あとで教えてくれ」
リュウヤの邪気のこもりまくった問いかけに、キリトはガックリとうなだれた。
とはいえちゃっかり情報を求めるところ、こいつほんとうに食べものには強欲なやつである。
その様子をリュウヤはニヤニヤと見ながらキリトに助言した。
「そうだ、メシが食いたきゃアスナにおごってもらえよ」
「えっ……? いや、それはダメだろ」
考えてもいなかったという顔をした直後に否定をするキリト。
人がイイよなこいつ、と思いながらもリュウヤはそれを認めない。
だって、面白そうだもの!
「なにがダメなんだよ。昼寝に誘ったのはお前にしても、その先の見張りって行為は十分恩を得るべきもんだろ。何も考えずに寝始めたこいつが悪い。
向こうにしても
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