第二十一話 匂い
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キリトの言い分をまるまる無視すると、ぶつくさ言いながら、しかしやけに細かく教えてくれた。
特にアスナが話しかけてきたところとか。少し顔を赤くしながら。なんだ、スカートの中でも見えたのか。このラッキースケベが。
唐変木の鈍感ヤロウでも、思春期真っ盛りなだけはある。興味がないわけではない、といったところか。
キリトの話を要約すると、日中堂々とキリトが昼寝をかましていたらアスナがお叱りに来たのだが、キリトの口車に乗せられ同じく寝転がってみると、今のスヤスヤ状態に陥ってしまったということらしい。
簡単に言えばミイラ取りがミイラに、だ。
だがこれはかなり進歩しているとも言える。
以前までの彼女なら、有無を言わさずキリトを迷宮区へ連れて行っただろう。それこそ引きずってでもだ。
こんなイメージさえ持たれるほどに階層攻略へ異様な執着を見せるアスナは、ついに《狂戦士》とまで揶揄されるようになった。
そんな彼女が「口車に乗せられる」という事態は彼女の心境の変化そのものを如実に表している。
つまりキリトの一言一句の意味を考える余裕ができたということなのだろう。それはリュウヤにとって、攻略組の一員としても、先輩としても嬉しいことだった。
(ま、なにがキッカケかは知らないけど)
嬉しい変化の契機は追及せず、リュウヤは少しだけ相好を崩した。
「そんで? お前はずっとここで《閃光》様の寝顔をおかずにナニしてたの?」
「?? 普通に見張りしてただけだけど……?」
「ちっ、つまんねえ奴」
「なんかいきなり罵倒されたんですけど!?」
(だってこれはちょっと、男としてどうかと思うんだよなぁ……)
興味があるないに関わらず、男子として知識がないのは捨て置けない。コミュ障なキリトのことだ。教えてくれるような友だちがいなかったのか、それともそんな話にならなかったのだろう。
そっちの知識は男子として盛り上がる話題の上位なので(リュウヤ調べ)、その知識で男の友だちでも作ってもらえれば良い。
なんて大義名分を得て、今度みっちり教えてやるか、とリュウヤが不気味な笑みを携えて密かにスケジュールを組んでいるとキリトがふとアスナを見ていた。
「安心しろ、死んじゃいねえよ」
リュウヤがブラックジョークとともに苦笑気味に言うと、キリトも同じような表情を見せ。
「それはわかってるよ。ただ……」
「この寝顔を見た男はいるのかってか? そこも安心しろ。そんな無防備な表情見せんのはお前に対してだけだ」
「違うわ! ていうか、友だちくらいいるんだし、俺だけってわけじゃないだろ」
「はぁ………、わかってねえなぁ……」
「???」
ひたいに手をつきやれやれとかぶりを振
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