第二十一話 匂い
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きずっていた。
「………あ? なんだあれ」
リュウヤがムダにステータスを全開にして転移門へと爆走していると、不可解な光景が眼に入った。
十数メートル先、作られた道から外れた草はらに、木漏れ日の下で寝ている少女と、それを尻目にボーッとしている少年がいた。
徐々にスピードを落としつつその場に近づくと、虚空を見つめていた少年がこちらに気がついた。
「り、リュウヤ………?」
「キリト………なにやってんのお前?」
正直な感想がまさにそれだった。
隣に美少女を寝かせておいて、リュウヤに気づいてかけてきた声は子犬のようなか細いもので、その瞳は助けてと言わんばかりに訴えてくる。
寝ている美少女もそうだ。
その顔立ちはもちろんのこと、服装を見れば一発で分かる。
かの栄光の騎士団《血盟騎士団》の副長にして恐るべき速さを持つ剣技ゆえに《閃光》とまで言われたアスナだった。
ちらりとアスナを見てからキリトへと視線を戻すと、キリトは頬をポリポリとかきながらリュウヤから目を逸らしていた。
「さて……、ファンクラブにでも連絡を入れようかな」
「待て待て待て待て、 ほんと待ってお願いだから! あんたが連絡すると誤解しかうまないからっ!」
「じゃあ俺と現実から目を背けないでちゃんと説明してもらおうか」
そういうと、キリトは不承不承といった風に口を開いた。よほどアスナの非公式ファンクラブの会員さんに連絡されるのがイヤらしい。
別に虚偽報告なんてしないって。
有る事無い事、拡大解釈して大げさにするだけだってば。
そんなこと(虚偽報告、拡大解釈)をファンクラブに連絡されたら、こっちは嘘偽りなく冗談抜きで社会的に、もしかすると物理的にも殺されかねない。男の嫉妬ほど醜いものはない。ネトゲプレイヤーならなおさらだ。
ーーーいや、男の嫉妬より醜いものなんてのはいくらでもあるーーーあった。それを俺は知っている。身をもって、身に染みて、知っている。
リュウヤの瞳に一瞬陰ったナニカに気づくことなく、キリトは言い訳を始めていた。
「今日は天気がいいからさ、ここで昼寝してたんけどーーー」
「ちょっと殴っていい?」
「えっ、なんで!? まだなにも言ってないぞ!?ていうか唐突だな!」
「俺は昨日から迷宮区に潜ってたから昼寝できてないんだよ………!」
「理不尽すぎる!」
ガッデム! と先ほどのリュウヤのように頭を垂れるキリト。
それだけでだいたい満足したリュウヤはキリトに先を促した。
「まあそれは後でいいや。とりあえず言い訳を聞こうか」
「結局殴られるんだな………。あと言い訳じゃないからな? 状況を説明するだけだから!」
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