第二十一話 匂い
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昼寝をするときには重要な条件がある。
一つ、当然晴天であること。
一つ、そよ風が吹いていること。
一つ、爽やかな湿度であること。
一つ、寝床が柔らかいこと。
この四つがリュウヤの「昼寝日和の条件」だ。
今日はその条件が揃い踏みした絶好の昼寝日和だった。
SAOにおける気候システムは、晴れていても湿っていたり、害はないがうっとうしい虫が飛んでいたりと中々素直じゃない。
そういうひねりが許されるのは美少女・美人さんに、正義の体現者《かわいい》だけである。
だが今日は珍しくデレてくれたのか、年に数えるくらいしかない最高の気候設定だった。
(機械にデレられても、とか言うのはなしで)
そしてお昼寝大好きダラダラ大好きっ子ことリュウヤは朝っぱらからグータラにお昼寝を享受してーーーいなかった。
そう、「だった」なのだ。
絶好の昼寝日和「だった」
最高の気候設定「だった」
全てが過去形。過ぎ去りし時、戻りはしない過去なのである。
リュウヤが自らの失態に気づいたのは夕刻にほど近い午後四時ごろだった。
昨日の昼間から迷宮区に潜ったら色々あって中で夜を越すハメになり、帰るのめんどくさいからっつって、そのまま夕方まで狩りでもするか〜のノリで三時くらいまで攻略をしていた。
しかし疲れは出るもので、そろそろ切り上げるかと思い迷宮区を出てきたのがその時間帯だった。
「ウソ…………だろ………?」
時計は巻き戻せても、時は戻せない。巻いたところで時間は余るだけだ。
リュウヤはヒザを曲げ、地に伏した。いわゆるorz状態である。
やっちまった、ほんとにやっちまった。なんでさっさと出てこなかったんだ……。
めんどくさがらずに出てこればよかった。
迷宮区出口の真ん前で手とひざをついている俺に、奇妙なやつを見る目をしながらプレイヤーたちが通り過ぎていく。
突き刺さるような忌避の視線は、しかしリュウヤには痛みすら感じない。感じているのは自らの失態の大きさだ。
ーーーいや、待て。まだ諦めるような時間じゃない。
四月に入ったこともあって、日はまだ高く(見えないけど)日没までは何時間か余裕がある。
その時間を、無意味に消費してはならないーーーッ!
垂れていた頭を瞬時に上げ、アクション映画バリの身軽さでジャンプしながら立ち上がると、リュウヤは猛然と走り出した。
「ひゃっはぁぁぁ!! 時よ、我が眠りを妨げることなかれ! 私は神であるぞぉぉ!」
ふはははは! とそう叫びながらその場を後にした。
当然、「なんだあいつ……」という視線を送られたが、そんなことを気にするリュウヤではなかった。
弁解しておくと、この時リュウヤは深夜テンションを引
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