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アインクラッド篇
movement U 絶望と希望の二重奏
決着と決意
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迫る白刃。アスラの顔が愉悦に歪む。……様に見える。
俺の首筋を掻き切らんと、真横から振られるそれを回避することは不可能、剣での防御も間に合わない。籠手での防御なら間に合うが……ボス相手では焼石に水だろう。
………………まぁ、だからと言って俺が死ぬか、と言われたらそうでもないんだがな。
「……残念だったな、アスラ。」
確かに俺の首をはねる筈だった刃はしかし、その手前数ミリの所で制止していた。刀の鎬の部分には、俺の指が添えられている。
体術スキル《
幽世
(
かくりよ
)
》
所謂『白刃どり』だ。命中補正はないが、成功させればどんな一撃も止める絶対防御技。体術を八割マスターしていれば誰でも使えるが、恐ろしく難しいのと、使用時に武器を手離す必要があるので、知っていても誰も使わない。俺でも成功率は三割、体術が主体のマシラですら五割を僅かに超える程度だ。が、成功したなら関係ない。そして―――――
「生憎、LAは俺じゃないんだ。」
「オオオォォォォ!!」
反対側から咆哮と共に赤い光を纏った剣が打ち出される。《ヴォーパルストライク》、やったのは多分某黒ずくめだろう。
『ガァ…………!?』
そんな呻き声だけを残して、アスラは爆散し、無数のポリゴンへとその身を変えた。
「ハァ……。」
ドサッ、とその場に座り込んだ俺は、何時の間にか隣にいたヒースクリフに尋ねる。
「何人だ?」
「四人だ。」
「そうか……」
会話と呼ぶには余りに短いやり取り。しかし、それで充分だった。
「……………。」
辺りが沸き返るなか、そこにだけ奇妙な静寂が満ちる。
「……君も混じった方がいい。今回のヒーローだからな。」
「ハッ、柄じゃねえよ。」
再びの沈黙、俺はふと、目の前の男に尋ねてみたくなった。
「茅場晶彦は……俺達に何をさせたいんだと思う?」
「………何をさせたい、か。」
「ああ、奴はアインクラッドに俺達を閉じ込めたこの状況こそが望みだと言った。この世界を観賞すると。つまり、この状況に何かを期待してるって事じゃないのか?」
「そうだな………。」
その時、ヒースクリフの無機質な顔が、一瞬だけ、何かの感情を帯びたのを、俺は見逃さなかった。
「彼が何をさせたいのかは分からない。だが、我々がするべき事は決まっている。一人でも多く生き残り、この城の頂を極める。それだけだろう。」
「………だな。」
はぐらかされた。直感でそう思った。しかし、追究は出来なかった。取り返しのつかない“何か”をそこに感じた。
「では、私は皆に話すこともあるのでね。」
そう言って去っていく後ろ姿を、俺は黙って見送った。
「アマギ。」
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