第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
死者の想い:絆と証
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泣く声だけの沈黙が十秒以上続き、グリムロックの声に静寂が破れる。
「その指輪……。たしか葬式の日、君は私に訊いたね。ヨルコ。グリセルダの結婚指輪を持っていたいか、と。そして私は、剣と同じく消えるに任せてくれと答えた。あの時……欲しいと言ってさえいれば………………」
声に次いで、崩れる音。
グリムロックがこの件に関わる殺人への関与を認めた瞬間だった。
その後も彼等《生者》の問答は続いた。
グリムロックの言葉は、どうしようもなく私を責め立てるものばかりだったけれど、この痛みは受け入れなくてはならないものだと思う。
私が自分を偽ったから、あの人は私を誤解してしまった。
私が仮面を剥ぎ取ってしまったから、あの人は私を信じられなくなった。
私が頑張るたびに、あの人は開いていく距離に心を痛めた。
女の子――――アスナちゃんはグリムロックが私に抱いた感情を《所有欲》だと言ったけれど、それでも、私はそんな彼に《依存》してしまっていた。私が仮面を取り払い、戦う理由として、都合よく旦那の為にと思い続けて、彼を理由にしてしまった。ここから抜け出す為に剣を振るう理由付けにその方が楽だったから。
………やがて、グリムロックは黄金林檎のメンバーに連れられて去っていった。
私は、残るキリト君とアスナちゃんを迂回するように木々の陰を伝って墓標に歩み寄った。ヨルコの掘り返した痕が残る十字架の木に触れながら、主街区へと戻ろうと歩き出す二人を見送ることにした。
この一件に関して、とくに旦那の罪を暴いて更生の道を示してくれたのは、あの子達が頑張ってくれたからというような気がする。
それに、伴って歩く二人の姿がいつかPC画面の中で寄り添った、ただの神官と騎士だった在りし日の自分達に似ているようで、どこか懐かしいような、これから頑張ってほしいような、複雑な思いが込み上げてくる。
――――と、観察しているのが悪かったか、キリト君と目が合ってしまった。
隠れ率も30パーセントまで下回ってしまったものの、このベールには《看破されてから四十秒間だけ隠れ率を30パーセントで踏み止まる》という特殊効果が付与されている。つまりは《視認されていてもプレイヤーとしてシステムに認識されない》という、カラーカーソルが表示されない状況が成立する。しばらくは私をプレイヤーとは思わないでいてくれるかも知れない。
スレイド君はどんなお針子さんと知り合いなのか気になるところだけれど、そんな疑問も彼等の視線も、私にとってはどうでもよかった。それほどに、あの二人には他人を引き込むような強さを感じさせられる。
彼等を見れば分かる。あの時、決死の覚悟で戦ってくれた《私の親友》や
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