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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章終節 離別のポストリュード  2024/04
死者の想い:絆と証
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絆の証明》。
 嘘と誠とが半分ずつ納められたそれは、スレイド君の言葉を信じるならば、ヨルコに託されたそうだ。

 僅かに肩を震わせたヨルコはそれでも振り向かず、再び頷いて答えてくれる。
 真意を汲んでくれる彼女への感謝と、彼女達を裏切ってしまった罪悪感が鬩ぎ合うのを無理矢理抑え、最後の言葉を遺そうと喉から声を絞り出した。


「あり、がとう………あとは、おねがい……」


 涙と嗚咽の混じった声でお礼を残して、後退りの格好で木陰に戻る。
 隠れ率は上限値の百パーセントを示している。もう、この周辺で私を看破できるプレイヤーはいないだろう。


「では、私はこれで失礼させてもらう。グリセルダ殺害の首謀者が見つからなかったのは残念だが、シュミット君の懺悔だけでも、いっとき彼女の魂を安らげてくれることだろう」


 するりと、グリムロックが翻る。
 もう用はないとばかりに去っていく彼の背に、ヨルコが鋭く言葉を投げかけた。


「待って下さい………いえ、待ちなさい、グリムロック」


 呼び掛けに応じて足を止め、少しだけ振り返って見せる。
 柔らかい表情はそのままだけれど、彼の放つ雰囲気からはどうしても棘のようなものを感じてしまう。


「まだ何かあるのかな? 無根拠かつ感情的な糾弾なら遠慮してくれないか、私にとってもここは神聖な場所なのだから」
「グリムロック、あなたはこう言ったわね。リーダーは問題の指輪を装備していた。だから転送されずに殺人者に奪われた。でもね………それは有り得ないのよ」
「………ほう? どんな根拠で?」


 向き直るグリムロックに、ヨルコは苛烈な声を浴びせる。


「ドロップしたあの指輪をどうするか、ギルド全員で会議をした時のことをあなたも覚えているでしょう? 私、カインズ、それにシュミットは、ギルドの戦力にするほうがいいと言って売却に反対したわ。あの席上でカインズが、本当は自分が装備したかったのに、まずリーダーを立ててこう言った――――《黄金林檎》で一番強い剣士はリーダーだ。だからリーダーが装備すればいい。
 それに対して、リーダーがなんて答えたか、私はいまでも一語一句思い出せるわ。あの人は、笑いながらこう言ったのよ。――――SAOでは、指輪アイテムは片手に一つずつしか装備できない。右手のギルドリーダーの印章(シギル)、そして………左手の結婚指輪は外せないから、私には使えない。いい? あの人が、その二つのどっちかを解除して、レア指輪のボーナスをこっそり試してみるなんてこと、するはずないのよ!」


 鋭い声は、まるで私の思いを弁明してくれているようだった。
 やっぱり、私はギルドメンバーに恵まれていたらしい。


「何を言うかと思えば。《するはずがない》
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