第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
死者の想い:絆と証
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に彼を裏切ってしまった罪悪感、旦那の凶行を認めたくないという現実への拒絶。それらが綯い交ぜになって、事の成り行きを見つめ続けるだけになっていた。
「初めまして、グリムロックさん。俺はキリトっつう……まあ、ただの部外者だけど。――――確かに、あんたがこの場所にいたことと、《ラフィン・コフィン》の襲撃を結びつける材料は今は何もない。奴らに聞いても証言してくれるわけはないしな」
一拍おいて、黒い装備の男の子――――キリト君は、目つきを鋭く変えて問い質す。
「でも、昨年の秋の、ギルド《黄金林檎》解散の原因となった《指輪事件》………これには必ずあんたが関わっている。いや主導している。なぜなら、グリセルダさんを殺したのが誰であれ、指輪は彼女とストレージを共有していたあんたの手元に絶対に残ったはずだからだ。あんたはその事実を明らかにせず、指輪を密かに換金して、半額をシュミットに渡した。これは、犯人にしか取り得ない行為だ。故に、あんたが今回の《圏内事件》に関わった動機もただ一つ………関係者の口を塞ぎ過去を闇に葬ることだ、ということになる。違うかい?」
キリト君が口を閉じると、丘の上に沈黙が生まれた。
でも、グリムロックは口許を歪ませて、声音を抑えながら話し始める。
「なるほど、面白い推理だね、探偵君。……でも、残念ながら、ひとつだけ穴がある」
「なに?」
キリト君の反射的な問い掛けに、グリムロックは鍔広帽を引き下げる。
「確かに、当時私とグリセルダのストレージは共有化されていた。だから、彼女が殺されたとき、そのストレージに存在していた全アイテムは私の手元に残った……という推論は正しい。しかし………、もしあの時指輪がストレージに格納されていなかったとしたら? つまり、オブジェクト化され、グリセルダの指に装備されていたとしたら?」
「あっ…………………」
「…………え……?」
女の子が幽かに声を漏らす。
その声に掻き消えるように、疑問符が宙に融けていった。
どうしてという問い掛けは、彼の無実を信じる想いと共に押し流されてしまった。
彼の証言は、つまり《自分はあの指輪》を手に入れていなかったという意思表示。でも、それは在り得ない。
半年前のあの日、スレイド君に助けられたその場で私は《離婚》と《スレイド君以外のフレンドの削除》と《ギルドの離脱手続》を行っていたのだから。
それは、スレイド君からの申し出だった。もし仮にグリムロックの主導で私の誘拐殺人が計画されていた場合、生き残っているという状況こそが目障りな状況になるだろうと推測した彼は、誰かにメールで数度遣り取りを済ませた後に、私の死の偽装を実行させたのだ。
離婚した
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