第1章終節 離別のポストリュード 2024/04
死者の想い:絆と証
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事件の根幹に近い存在ということになるのだから。
今でこそ無力化されているけれど、まさか彼が皆を………
内心で否定しつつも背筋に冷たいものが走る最中、旦那が、三人と墓標を見てから低い声を響かせた。
「やあ………、久しぶりだね、皆」
それは、まるで久しぶりの再会を祝したような挨拶だった。
でも、モンスターの攻撃さえ怯えてしまう彼が、プレイヤーの武器を向けられても全く動じないその胆力に違和感を覚えてしまう。私の知る限りでは、彼にあれほどの精神的な強さは無かったように思える。
「グリムロック……さん。あなたは……あなたは、ほんとうに………」
応じるように、震える声でヨルコが呟く。
途切れてしまった言葉の先は容易に予想出来たけれど、どこか認めたくはないものだった。
あなたは、ほんとうに《私達を殺そうとしたのか。》
この場で、私が来る前にどのような遣り取りがあったかは知らないけれど、それでもヨルコは確証も無しに誰かを悪くいう事はない。更に言えばヨルコはとても賢い女の子だ。何らかの結果として得たその確証は、彼女の鋭い見識から為っている筈なのだ。それでもなお、私はまだ彼を信じてしまっているが………
やがて、剣を鞘に納めて旦那の背後から黒一色の男の子の隣に移動するのを見送って、微笑を浮かべた旦那が唇を動かした。
「……誤解だ。私はただ、事の顛末を見届ける責任があろうと思ってこの場所に向かっていただけだよ。そこの怖いお姉さんの脅迫に素直に従ったのも、誤解を正したかったからだ」
「嘘だわ!」
白い装備の女の子が、鋭い声で否定した。
「あなた、ブッシュの中で隠蔽してたじゃない。わたしに看破されていなければ動く気もなかったはずよ!」
「仕方がないでしょう。私はしがない鍛冶屋だよ。このとおり丸腰なのに、あの恐ろしいオレンジたちの前に飛び出していけなかったからと言って責められねばならないのかな?」
白熱する女の子と、穏やかな調子を崩さないグリムロックとの応酬は平行線を辿ってしまう。
でも、どうやらレッドプレイヤーは既に撤退した後みたいだった。どんな経緯かはさておき、それでもこの場にスレイド君の姿が無いというところに少しだけ不安が過る。考えもなく飛び出してしまった為に碌な作戦も無いし、私が無策に飛び出してしまえば、この均衡がどう壊れるか予想出来ない。
――――それに、彼の歪んだ平静が恐ろしく思える。
シュミット、カインズ、ヨルコの三人は何も言うことなく論争を黙って聞いている。
私も、気付いたら傍観者となっていた。皆の命の危機が去っていたという安堵と、そこに付け入るように込み上げるグリムロックへの恐怖と、同時
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