第11夜 盟約
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とドレッドの誘いに返答するだけの材料を手に入れることが出来た。
「さっきの話、受けるよ。呪法師の誇りにかけて」
ホルスターから拳銃を抜いたトレックは、安全装置をかけたその銃口を斜め上に突き出す。ドレッドもまた拳銃を抜き、他の2人に目配せしながら拳銃の銃身をドレッドのそれと重ねた。遅れてステディと呼ばれた少女の杖と、もう一人の拳銃の銃口、そしていつの間にか近づいていたギルティーネの鞘におさめられた剣の鍔がかちりと音を立てて重なった。
己が命を預ける武器を重ねることで「己と相手の命運が重なった」事を表す呪法師にとって大切な誓いの儀式だ。どんなに相手が気に入らないときでも、例え相手の名前さえ知らなくとも、この儀式に応じ、一言唱えたというその事実を以て信頼関係は成立する。
「呪法師の誇りと我が名にかけて」
「呪法師の誇りと、ドレッド様への忠誠にかけて」
「呪法師の誇りにかけて」
「…………………」
ギルティーネは何も言わない。事情を知らぬ二人の不審が口を突く前に、トレックが彼女の代わりに告げる。
「ギルティーネさんは喋れない。でも自発的に剣を掲げたってことは、誇りをかけて応じたのと同じことだと思う。――これよりトレック・ギルティーネ両名の命運は、試験が終了するまで汝らと共にある」
「ドレッド・ステディ・ガルドの三名の運命も、同じく諸君らと共に在ることを誓う」
何もかもが不確かな世界で『確かなこと』など、大陸の民にはほとんどない。
故に、呪法師は唯一『確かなこと』に誓いを立てることで、互いの信頼を誓い合う。
目で示し合わせトレックとドレッドは同時に告げた。
「「『悪魔』よ、誓いから決して逃れられぬよう我等を呪い給え――」」
大陸で絶対を誓ってくれる存在――それは、『欠落』の呪縛で呪法師を縛った『悪魔』を於いて他にあり得ない。
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