第11夜 盟約
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らしい。
だが、今のステディはもうギルティーネ・ドーラットのことなどどうでもよい。
(トレック……貴様はなんなのだ。なぜあのような気配を放つ獣を鎖もつけずに平気な顔で引き連れ、その行動を支配できる……何故先ほどまでそんな女の髪を呑気に梳いていた……!)
ステディには、目に見える危険な化物より、むしろトレック・レトリックという男の方が不安を掻きたてられた。
= =
先ほどの反応で、漸く合点がいった。
この男はトレックとギルティーネの関係をある程度理解したうえで、試したのだ。
「そういうことか、ドレッド・リード。初対面の人間を試すとはいい趣味じゃないな……さてはそっちの二人に『人喰い』の話を伝えてないだろう?敢えて吹っかけて俺が彼女の手綱を握れているか見極めた訳だ」
「なっ……あの女が『人喰いドーラット』だと!?」
「ど、どういうことですか……ドレッド様!!」
ドレッドの仲間二人にあからさまな動揺が走る。元々『人喰い』の話は『鉄の都』でしか広がっていないそうだが、ドレッドから何かの拍子に聞いたことがあったのかもしれない。どちらにしろこれでハッキリした。
彼はかなり知的であらゆる事態を想定している印象を受ける。その気があれば、予めギルティーネを挑発するような真似はよすよう二人に伝えておく事も出来た筈だ。それをしなかったのは、敢えて敵と完全にみなされないギリギリの範囲で挑発させ、こちらがギルティーネの管理をきちんとできているかを試したかったからだ。
「――正直、君が彼女の髪を梳いている光景を見た時点で9割ほどの確認は出来ていたのだが、あと9分の確率を埋めておきたくてね。気分を害したなら謝るよ、トレック君……彼女の新たな『安全装置』の役割を受けたのは君だったんだね」
「成り行きで、な」
また不吉な言葉がちらほら垣間見えて、トレックは内心でうんざりした。どうして当事者である自分が知らないことばかり周囲が知っているのだろう。しかも勝手に試される真似までされた。しかし、同時にドレッドの当初の主張である共闘の意味が少しだけ見えてくる。
ギルティーネの実力は極めて高い。一度の接敵で複数の呪獣を速やかに撃破する戦闘力を、恐らく彼も知っていたのだろう。恐らく接近戦だけで言えば彼女は今回の試験に参加した中で突出した実力だ。それを取り敢えずでも自分の近くに連れていれば、上位種の呪獣と戦った際の勝率は跳ね上がる。
また、別の可能性として、彼は予め彼女の動向を探るように送り込まれていた可能性がある。教導師が『断罪の鷹』の馬車で直接連れてきたような存在だ。念を入れてそのような指示を与えられた学徒がいても不思議には思わない。
ともかく、ある程度事情が見えてきたことでトレックはやっ
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