第11夜 盟約
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以。
別段問題のある事ではない。その後、ドレッドが別の人間を発見して連れてきて、3人はチームを結成した。最後の一人、ガルド・ルドルンはステディを受け入れられる『欠落』だったために問題も起きなかった。こうして、ドレッドを中心にステディの世界が回り始めた。
心地よい物だった。戦いでは息が合うし、知識が豊富なドレッドの話はいつも聞いていて飽きない。ガルドは無愛想な奴だったが、本人なりにドレッドと共に歩もうとする姿には好感を持てた。こうしておおよそ1年が経過し、3人は『朱月の都』のサンテリア機関でも指折りの実力者と称されるようになった。
だが、何もかもうまくいくことはない。ドレッドを尊敬するようになった分、ステディは自分の気に入らない相手がドレッドと会話することに酷い不快感を覚えるようになっていった。彼は高潔で尊敬に値する存在であるにも拘らず、何故それに触れる資格もない愚昧な連中がドレッドに近づくのか。
ドレッドがそんな相手にも逐一真面目に付き合ってることに怒りはなく、近付いてくる方にばかり静かに敵意が湧き上がる。ドレッドに近付く邪魔者は全て目障りだった。
だから、当然。
この重要な試験の途中で女の髪を梳かしているような緊張感の欠片もない愚か者にドレッドが近づいた時、ステディは己が尊者の価値観を疑うより先に、相手への痛烈な憤怒を覚えた。ドレッドが直々に近づく存在となっているのに、何故相手はそれに相応しい振る舞いをしなかったのか。そればかりが腹立たしかった。
ドレッドに話しかけられて男が振り返る。
年齢はこちらと同じくらいだろう、すこしばかり童顔で力強さや頼りがいは感じない。大陸ではさほど珍しくもない色素の抜けた金髪は、染め物でもしているのか毛先だけが微かに黒かった。ドレッドに気付いた男――トレックは、親しげにドレッドと握手して笑顔を見せる。
へらへら笑うな、とも思ったが、笑顔はいいものだ。『欠落』持ちも普通の人間も、笑顔の美しさに差異はない。だからその時は湧き上がった敵意が抑えられた。
だが、それ以降は最悪だった。
トレックは話を聞けば聞くほどに無駄な質問や抱く必要のない疑問を次々にぶつけ、不躾な疑いの視線をドレッドに注いでいく。それがどれほど愚かで無駄な時間になっているのか、まるでステディは理解できない。
ステディは母親を思い出していた。礼儀を覚えないステディを母はよく叱りつけたが、礼儀を理解できないステディは時には生返事を返し、時には無視し、そして多くは反発した。しかし、永劫に噛みあわない二人は延々と暖簾に腕を押し付け続け、結局母はいつも疲れて諦めていた。その度、ステディはいつも「どうしてママは無駄な事を繰り返すのだろう」と不思議に思っていた。
トレックにしてもそうだ。どうして意味のない事に
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