第10夜 触発
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にその案を受け入れれば時間はロスしてもより安全性の高い行動が可能だろう。
しかし、トレックはその提案を安易に受け入れるつもりはなかった。
「………悪い考え方をすればこうも言える。上位種の呪獣が来たら手伝わせ、相手の方に上位種が行った場合は相手を囮にその場を脱出。体よく利用すると言う訳だ」
呪法師は助け合いが基本とは言うが、同時に欲望のある人間だ。目の前の戦いに対しては誠実でも、他人の戦いにまで誠実になれる人間は多くない。所詮この試験一度きりの隊列だ。自分が一度目を乗り切れればどんなに背信的なことをしていようが結果だけが残り、相手が死んでも失うものはない。
つまり、ドレッドがいい子のふりをしてトレック達を体のいい使い捨て援軍にしようとしている可能性が否定できない。
トレックの疑いが混じった瞳にドレッドは気分を害した様子もなく顎に手を当てる。
「『普通』の人間的な疑問を呈するな……こちらの言い分を正当化するような言い方だが、そんなものは実際に起きた時に冷静に対処すればいいのではないか?結局元々は別のチームだ。自分に振りかかった火の粉は自分で払えなければならない事に違いはあるまい?」
「………つまり、裏切りがあろうがなかろうが俺達の取る行動に変化はないと言いたいのか」
「違うか?私は同じだと考えるが」
確かに、元々は1チームで行く道のりなのだ。仮にドレッドたちがこの約束事を破っても、最初から助けてもらえると思ってないのであれば、それは当初の予定通りに進んでいると言うだけの事。
「つまりこの協定は無料のクジのようなものって事か。当たればラッキー、外れても懐は痛くない……と」
「出来れば協定には互いに誠実であった方が望ましいがね」
と、ドレッドの後ろで黙っていたうちの一人、ショートヘアの女の子が我慢の限界を迎えたように前に一歩出る。
「……貴様、さっきから黙ってきていればドレッド様に不敬な発言ばかり――!!」
「落ち着きたまえ、ステディ君。彼の疑いは正当なものであると私は考える。こちらが頼んでいる側であることを忘れるな」
「くっ……!」
素早く手で制され、女の子は歯を食いしばりながらも踏みとどまった。その表情には依然としてこちらに対する憤怒の感情がありありと込められているが、ドレッドにかなり陶酔しているのか彼の言葉には逆らえないようだ。
「それに」――と付け加えたドレッドが、その釣り目を更に細めて低い声で漏らす。
「どうやら彼の後ろの『獣』を刺激してしまったらしい。敵意を鎮めたまえ、あれと戦う気か?」
何の事だ――と告げようとした刹那、視界の端をしなやかな黒髪が躍る。
「………………」
静かに、ひたすら静かに、それはトレックの前に躍り出る。
灯薪が微かに立
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