第8夜 途絶
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
る。
「……このまま撤退する!俺が後ろを、お前は前を護れ!」
「…………―――」
「復唱はどうした!?ボヤボヤしている場合では………」
青年が後ろを振り向いた時、そこには誰もいなかった。
呆然とする青年はしばらくその場に立ちつくし――やや遅れて、上から彼の顔に生暖かい液体がびちゃりと垂れた。青年は反射的にそれを手で拭った。
どろりとした粘性と鼻を突く鉄臭さを感じる、真紅。
ペトロ・カンテラでも照らせない遙か上から滴る血液と共に、彼の目の前にからん、と何かが落ちる。青年が震える手でそれを拾い上げる。カンテラの明かりを反射するそれは、見覚えのある仲間の槍だった。
呪法師が戦場で武器を手放すとき。その意味を、青年は知っていた。
呪法師が武器を手放すのは、永遠に戦えなくなった時のみ。
「あ…………ああああ………!!ああ、うわあぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!!ハァッ、ハァッ……あああああああああああああああーーーーーーッ!!!」
闇が支配する空間に、ペトロ・カンテラのちっぽけな灯と半狂乱な青年の悲鳴が響き渡った。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ