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満願成呪の奇夜
第8夜 途絶
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、店の場所はどこなんだ?せっかちなお前の事だからもう予約まで取ってるんじゃないのか………、……おい?」

 返答がないことを不審に思い、二人の顔が同じ場所へと向いた。

「……どうしたんです、急に黙りこん――」

 3人の足音が、いつの間にか『2人』の足音に替わっている事に、彼等は少しの間気付けなかった。
 カンテラの照らす数mの範囲に、先ほどまでいた筈の親友がいない。ふざけて後ろにでも回り込んだのかと思って周囲を改めて見回すが、やはりその姿がどこにもない。
 まさか、気を緩めすぎて灯りの外に出たのか――そんな不安が脳裏をよぎる。

「おい、カンテラの範囲から勝手に出るな」
「………返事がありませんね。それに、足並みを崩すような音もありませんでした」
「……どういうことだ?」

 不可解――としか言いようのない状況だった。しかし、もし呪獣に襲われたのならば音もなくいなくなることは考えにくい。しばし考えた後、青年は「何らかの理由で親友が立ち止った」と考えた。だとしたら、少し引き返せば見つかるはずだ。踵を返し、槍使いにアイコンタクトをする。
 まさか大切なパートナーを放置する訳にも行かないし、まさか崖に落ちたという事もあるまい。会話は途中まで続いていたのですぐ近くにいる筈だ。そう考えていた。

 十数歩程度後ろに引き返すが、道路に親友の姿は見えてこない。
 不審が段々と不安に移り変わり、背筋にぞわぞわとした感覚が奔る。

 人間は突然消失したりはしない。しかし、呪獣に襲われたのならば悲鳴の一つ、物音の一つは挙げる筈だ。何より親友は光源杖を持っていたのだから、非常時ならば対処していた筈である。だから、すぐ近くにいる筈なのだ。
 焦るように足が速くなり、槍使いの足音も慌ててそれに合わせていく。
 僅かに照らされた光の範囲に目を凝らし続けた青年は、やがて見たくないものを発見した。
 
 それは、道路を真紅に染める、生乾きの液体。

 心臓の鼓動が加速し、冷や汗が噴出するのを感じながら、青年はその液体を拭った。
 どろりとした粘性と、鼻を突く鉄臭さ。それは疑いようもなく、生物の命の源――血だった。

「―――ッ!!」

 その瞬間、青年は腰を落として拳銃を何もない虚空に構えた。
 いなくなった親友と残っている新しい血痕。それが表すのはすなわち、『敵』の存在。この空間のどこかに、呪法師を音もなく仕留めるような存在が潜んでいる。しかも、カンテラの照らす空間に侵入出来るような「上位種」の可能性が高い。
 こうなった以上、あの親友の生存は絶望的だろう。この試験は自分と槍使いの二人で至急『境の砦』に撤退するしかない。何より敵の正体が掴めないのでは下手をすれば全滅だ。槍使いに声をかけ、青年はその場からゆっくりと遠ざか
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