第8夜 途絶
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てきていないみたいだけど、もし出てきたら……)
ちらりと後ろを見ると、こちらを見つめていたギルティーネと目が合う。
戦力としては申し分ない彼女だが、果たして上位種にも同じだけの成果を出せるかは分からない。
呪獣の中には、一撃で死ぬほどの攻撃を数度凌げる上位個体が存在する。
先人が大地奪還を一旦縦断せざるを得なかったほどの被害を齎した上位個体。当時この個体の犠牲者になった呪法師の数は数百万にも及び、結界の完成が遅れていれば大陸の民が全滅していたかもしれないとさえ言われている。
通常個体に比べて能力だけでなく知能も高いらしいこの個体に関しては、戦闘経験のある呪法師が圧倒的に少ないために戦闘ノウハウは殆ど伝わっていない。耐久力の高い個体、武器を使う個体、噂では呪法師とは異なる独自の呪法を扱うという話もある。
先に待つのは不安要素のみ。毎年実地試験で死人が出る事を考えれば、出くわす可能性は十分にある。その際に自分は冷静に指示を飛ばし、確実に迎撃することが出来るだろうか。初めて出くわした呪獣にもあれほど心を揺さぶられた、自分が。
そしてもしこの状況下で司令塔がミスを犯した時、最初に被害を負うのは前衛。
「………………ッ」
トレックの脳裏に、鮮血を吐き出して崩れ去るギルティーネの姿が過った。
もしも『人喰い』さえも喰らうような相手が出現した時は、トレックは――。
「考えるな……そうだ、死人は出ているが生き残りもたくさんいる。この試験は、冷静に動けば生き延びられる試験なんだ」
地に足をつけろ、呼吸を整えて頭の中をクリアに洗え。自分に言い聞かせるように基本的な心構えを一通りなぞったトレックは、前を見つめた。そして、思った。
(今の独り言でギルティーネさんに呆れられてたらどうしよう……今日の俺って何もかも恰好付かないなぁ)
ちらっと後ろを見たが、ギルティーネは相変わらず無表情でこちらを見つめている。
つくづく、彼女の『欠落』は厄介だ。こんなしょうもない事でさえ、彼女には確認が取れない。
= =
やっと折り返しだな、と青年は思った。
試験が始まってから早い段階で出発した彼らは、既に仮設砦で折り返しの証である書を受け取っていた。前半に幾度か呪獣の襲撃を受けてひやりとしたが、いざ戦いになればまるで迷いなど無く行動に移ることが出来た。計三名、『地』の呪法を得意とした親友と『錬』が得意な槍使い、そして『熱』を司る自分が組んだチームは、今も順調に歩を進めている。
呪法師が呪獣の接近を察知するのは難しい。呪獣はその殆どが「臭い」という物を持たないし、獣と同じく接近するときは鳴き声などを一切上げない場合が多い。そうなると相手の気配最も捉えやすいのは
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