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満願成呪の奇夜
第7夜 初陣
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りびりと体が後ろに吹き飛ばされそうな咆哮。
 トレックはほとんど無意識に、叫んだ。

「これが………こいつが、『呪獣(ザンヴィー)』………俺達が滅すべき敵ッ!!」

 恐ろしかった。
 逃げたかった。
 この瞬間、トレックは呪法師として最初の選択を迫られた。


 それは彼の身にこれより降りかかる数多の試練と苦難の、最初の一つ。
 選択しないほうが、彼にとっては結果的に幸せだったのかもしれない。
 しかして、彼はこの場を生き残るために二つの本能の内の一つを選択した。


「俺は、お前を殺さなきゃならないんだ……ッ!!」


 闘争本能――前線で戦う呪法師が、戦意という名の灯を消さぬためにくべ続ける薪。
 トレックはまるで訓練通りに銃を構え、まるでそれが定められた運命だったかのように即座に銃爪に指をかけた。

 身体の奥底から湧き上がる呪力が手を通して拳銃の弾丸に注がれる。
 イメージするのは火薬が爆ぜる『熱』と鉛玉の『錬』。
 二つを織り交ぜた力は、灼熱の炎を纏って敵を穿ち、燃やし尽くす。
 
「射抜け!『炎の矢(フレッツァ・リャーマ)』ッ!!」

 引き金を引いた瞬間、強烈なマズルフラッシュと共に拳銃から凄まじい熱量の『炎の矢』が発射され、瞬きをする間もなく呪獣の頭部を貫いた。

『ル゛ウウ、エエェ……!?』

 貫かれた部分からあっという間に呪獣の全身を炎が覆いつくし、その身体がぼろぼろと地面に崩れていく。炎を纏った弾丸にトレックがつめた呪力が、呪獣の全身と反応して互いを喰らいあっているのだ。そして――燃え広がった体がペトロ・カンテラの範囲外を照らし上げた瞬間に、戦闘区域内に複数の呪獣が侵入してくる。

『ル゛ウオ゛オオオオオオオオオオオオッ!!!』
『ウ゛リリリリリ……ルア゛アアアアアアアアアッ!!』
『ヴォアアアアア……イ゛、アアアア…………!!』

 敵が次々に現れる中、トレックは初めて撃ち殺した呪獣の身体が崩れ去る光景を見つめ、確信した。

(――呪法師として、俺は戦える!!)

 気が付けば既にギルティーネは抜刀して、こちらの声を待つように構えている。果たしてそれは指示を飛ばすトレックを品定めしているのか、最初の得物を敢えて譲る為に動かなかったのは分からない。だが、トレックはそのおかげで一つのしがらみを振り払った。
 
「こいつらを叩きのめして速やかに目的地に移動する!敵正面、突破せよッ!!」
「………………!!」

 トレックの腹の底から吐き出された号令とほぼ同時に地を這う猛獣のように駆けだしたギルティーネは、抜き放ったサーベルを指でなぞり、柄に装着された鉄の歯車に付随するワイヤーの先端に括りつけられたリングを指で引く。

 ギャリリリリリッ!!と
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