第4夜 罪人
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引の類で表に出る許可を得た罪人である」と推測したが、現状ではまだハッキリとした事情が掴めない。
あちらは顔色からしてそれほど急いでる訳ではないようだ。ならば婉曲に、まだ探りを入れられそうだ。
「害なし、ですか……どうもこちらの噂とは事情が少し違うらしいですね。所詮噂は噂ですか」
「それはそうだろう。流石に人間の生き胆を貪り喰らったのなら問答無用で牢獄行きだよ」
「………ッ!!」
今、とんでもない情報が零れ出た。
(ちょ、ちょっと待って……『人喰い』って比喩的な意味じゃなくて食人文化的な意味かよッ!?そんな話聞いてたら確かに断固話を断るわッ!!)
危うく表情が崩れそうになったのを必死で堪えながら、自分自身に落ち着くよう促す。
噂通りではないと教導師は言った。つまり、別に本当に人間の生き胆を貪ったという訳ではないのだろう。相手に不審がられる前に、どうにか情報を聞き出す。
「……それで、上の扱いはどうなってるんですか?」
「ああ、随分苦心していたよ。何せ――喰われた相手は別の要因でほぼ即死状態だったからな。生きているならともかく、死体の場合は罪に問いにくい。目撃者の中にはショックで心的外傷を負って使い物にならなくなったのもいるし……」
「―――………」
トレックの頭の中で、四つん這いになりながら自分の腹を切り開いて小腸を咥える恐ろしい化物のような女のイメージが浮かび上がる。……今、自分の表情筋が盛大に引き攣らせずにポーカーフェイスを維持しているという奇跡をトレックは自覚した。
非常に認めたくない現実が見えてきた。
どうやらおおよその予想通り、トレックはこれから凄まじいまでの訳あり呪法師と組まされるらしい。ギルディーネ・ドーラットの情報をトレックに伝えなかったのは、知れば絶対にこの話に乗ってこないからだ。当然だろう、人間を喰った女と誰が好き好んでタッグなど組みたがるだろうか。
「噂を信じ込んだ連中が彼女に手を出しては返り討ちに遭って余計に怪我人が増えるものだから本当に困ったよ。結局は彼女を拘束するために元老院で『過剰防衛』という罪を法で作ってもらい拘束する形で『保護』する事態にまでなった」
「保護の方が本音ですか」
「当然だ。それに、彼女も呪法師であり続ける事を望んでいるようだしな」
トレックの頭の中で、自分に馬乗りになって血が滴る拳で殴りつけてくる鬼の如き女のイメージを思い浮かべた。トレックは、あの時に怪しいと思ってパートナーの話を断っておけばよかったと心底後悔し、ちょっぴり泣きそうになった。
しかし――逆を言えば相手は恐らく呪法師として崖っぷちで、この試験には是が非でも合格したいと考えている筈だ。最初にこの話が持ち上がった時、「タイミング」というワード
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