第2夜 懸念
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本的な問題に悩まされてきた。
ところが、少し前に事態は急転する。
急に教導師から「パートナーをこちらで決定する」というお達しがあったのだ。教導師が決定すると断言した以上、そのパートナーと自分が組まされることは理由がある。相性的にも性格的にも何らかの一致事項があるのか、それとももっと違った思惑があるのか――そこまでは計り知れなかったが、ともかく限界に近い状況にいたトレックはそれを気にする余裕が無かった。
そして願ってもいない話に齧りついたトレックを待っていたのは、ひとつの条件だった。
(先生方は『このパートナーと共に実地試験を受けることが条件だ』なんて言ってたが、当のパートナーは別の都で研修中だとかで会うことが出来ず仕舞い。つまり当日に合流して即席コンビを組まなきゃならない……)
この命懸けの試験に、当日に初めて出会った相手と組んでいきなり戦え――そんな滅茶苦茶な要求があるだろうか。しかもこの機会を逃した場合はパートナーの話は無しにするとまで言ってきた。余りにも突然の話にトレックは説明を要求したが、この話はタイミング的に相当ギリギリな『何かの条件』があるらしい。それ以上は何度詮索しても教えてはくれなかった。
結局トレックは焦りと誘惑が微かに上回り、今日という日を迎えてしまった。
(結局こっちが知ってるのは相手の「ギルティーネ・ドーラット」という名前だけ……やっぱり断るべきだったかなぁ?)
手渡された簡素な資料に目を落として思わずため息を吐きそうになったその瞬間――横に座っていた釣り目の男が小さく声を上げた。
「ドーラット………『人喰いドーラット』……?」
「え……」
釣り目の男性は資料に書かれた名前を凝視していたが、トレックの声に気付くとはっと顔を上げた。
「あ、失礼……何の資料かは知らないが、勝手に見るのは無遠慮であったな」
「いや、別にいいんだ。それより……この書類の人のこと知ってるのか?」
「知らない方がおかしいだろう。去年の実地試験であんなことをやっておいて………いや、そうか。『朱月の都』ではそれほど噂になっていないのか?ならそちが知らずとも可笑しくはない」
「……えーっと、どういうことか聞いていいかな。ちょっと訳ありで、この書類の人の情報が欲しいんだけど……」
一人で顎に手を当てて難しい顔をする男は、小さな声でトレックに囁く。
「私は元々、サンテリア機関『鉄の都』支部から編入してきたのだが、このドーラットというのはそちらの支部にいた学徒の女で……周囲からは『人喰い』と噂されるほどに危険な人物だ。何の調べものかは知らないが、深く関わらない事をお勧めするよ」
「………………マジで?」
「私はいつだって大真面目だ。……さぁ、余計なことは忘れてこれからの試験に集
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