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満願成呪の奇夜
はじまりの詩
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に満ちた未来の象徴にさえ思えた。


 ――それから再び1000年近い年月が流れ、大陸暦2137年。

 1000年の刻を経て、大陸の民の団結力は次第に失われていた。
 『朱月の都』を中心とする六つの都市は利害関係から単なる貿易相手と化し、それぞれの独立した政治体系を確立。全ての都市を繋ぐ『呪法教会』もその思想の違いから度々分裂を起こし、中には『呪法』を私利私欲に利用する犯罪者やテロリストも現れることとなる。
 また、地殻変動によって大陸を覆っていた嵐が一部消滅。大陸の民以外の存在が資源豊かなこの大陸へ次々に入り込むことで様々な文化が流入。これにより思想が多様化。自由な思想は増え、代償として嘗ての団結力と『呪獣』への危機感が薄れていった。

 更に、『呪法』の源泉である『欠落』を持った呪われし民の急速な減少によって『呪法』を扱えない人間が急増。嘗ては10人が10人扱えた呪いの力も今や10人に1人程度となり、『呪法師』の不足が囁かれるようになってきた。
 対して『呪獣』は未だに少しずつ成長しており、近年は短期間ながら『五行結界』の内部でも外同様の戦闘能力を発揮できる個体まで現れ始めていた。今の所大きな被害は出ていなかったが、『呪法師』が減少の一途をたどる現状、事が起こるのは時間の問題だと教会は見ていた。

 内部分裂。敵の活性化。そして戦力の減少。不穏な気配が濃密になってゆく結界の中で危機感を忘れて過ごす人々は、重大な事実を忘れつつある。

 大陸で生まれる全ての人間が呪われて生まれ、呪われて生き、呪われて死す――もはや古臭い教えと笑われるようになったその言葉から、大陸の民はまだ逃れられていないことを。人を呪った『悪魔』と『呪獣』の正体を何も知らないままであることを。

 人はまだ、『欠落』の本当の意味を知らない。
 
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