はじまりの詩
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00年もの月日が流れた頃、都でとうとう異形を完全に屠る技術が開発された。
『呪法』――呪われた民の用いる、呪術の力。
大陸の人間は悪魔と契約し、その際に呪われた。その際に得た莫大な呪いの呪力を戦闘に応用するという、常識では計り知れない技術だった。人々はその『呪法』の研究を重ね、発展させ、その力を持って都の外を囲っていた化物に戦いを挑んだ。
後に『大地奪還』と呼ばれる、大陸の民の反撃だった。
結果は、圧勝。大陸の民が得た莫大な力は瞬く間に異形を滅ぼし、人々は沸き立った。
後に判明した事実によれば、異形の化け物たち――後に『呪獣』と名付けられた――は彼等と同じく呪いの力を糧に動いていたらしく、同じ呪いの力をぶつけることで崩壊させることが出来ることが判明した。これに勢いづいた『朱月の都』は、今まで昼間にしか活動できなかった周辺の土地から一気に『呪獣』を追い出した。
1000年間逃げ続けた民たちの憤怒と憎悪の爆発的な奔流によって『朱月の都』は瞬く間に勢力圏を拡大し、周辺に五つの都を建造した。
巨大な木々に溢れた『森の都』、火山や温泉の豊富な『熱の都』、肥沃な平野の広がる『畑の都』、鉱脈豊かな『鉄の都』、多くの川や海と接する『潮の都』――特に『鉄の都』と『潮の都』の周辺は1000年ぶりの奪還であり、『朱月の都』は爆発的に発展した。
『呪法』を開発した学者たちは『呪獣』と戦うための組織――『呪法教会』を設立し、100年の歳月を経て五つの都の大地が持つ力を利用した『五行結界』と呼ばれる巨大な結界を作り出した。この結界は内部に侵入した『呪獣』をたちどころに弱らせ、最終的には消滅させる呪いが込められたもの。
そう、この空間では人間は闇を怖れる必要がない。人間が安寧できる、人間だけの空間が完成したのだ。
だが、発展はそこまでだった。『五行結界』が完成した頃、突然『呪獣』の戦闘能力が跳ね上がった。依然として『呪法』の力は有効だったが、それまで呪法に為すすべなく滅ぼされるがままだった『呪獣』たちの中から、一度や二度の『呪法』では消滅しない頑強な個体や、『呪法』を避けるために遮蔽物や人間から奪った盾などの道具を使用する個体が現れ始めたのだ。
大陸の民は、『五行結界』の外への更なる『大地奪還』を断念した。
幸いにして『五行結界』の完成によって大陸の民は従来の10倍近い生活圏を取り戻し、得られる資源の量は20倍以上に跳ね上がった。それまで決して豊かとは言えない生活を送っていたほとんどの民たちは、戦うより発展と豊かさを選んだ。
その頃、民間から『欠落』を持たぬ子供が生まれ始めた。
完全な人間の誕生――それは、これから訪れる希望
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